第一に、アメリカ合衆国(以下、米国)内のアーカイブ調査を進めた。具体的には、米国のベトナム反戦運動と黒人解放運動、特にパシフィック・カウンセリング・サービス(PCS)とナショナル・ロイヤーズ・ギルド(NLG)に焦点をあてて、これらの組織・運動が沖縄及び日本においてどのような活動を実施し、米国政府及び在沖・在日米軍当局の政策にどのように対峙したのかについて調査を進めた。たとえば、カリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館、同エスニックスタディーズ図書館、サンフランシスコ公共図書館、オークランド私立美術館などの所蔵史料を収集、分析した。運動方針や情勢分析に関するレポート、沖縄や日本に駐在した活動家らが発行したニュースペーパーを中心に分析を進め、活動の立ち上げ、展開、終了に至る運動の経年変化を把握することに努めた。 第二に、当時の運動の参加者・活動家と出会うことができ、聞き取り調査を開始した。具体的には、PCSの元活動家、サンフランシスコで徴兵対象者などに法律相談活動を行なっていた活動家などである。聞き取り調査を通じて、前述のアーカイブ史料だけでは把握できない、運動の実態、個人それぞれのライフヒストリーを理解することを試みた。また、アーカイブにはおさめられていない個人所蔵史料の収集も始めることができた。 これらの調査結果、共同研究グループ「地域ベ平連研究会」や「闇市的沖縄-アジア運動/文化研究会」などで口頭報告の形でアウトラインを発表した。また、関連する研究業績として、共著『知のフロンティアーー生存をめぐる研究の現場』(ハーベスト社、2017年)、「もう一つの地図を描きながら、〈地域〉を生きる」(『立命館言語文化研究』28巻3号、2017年)などがある。聞き取り調査に関しては、トランスクリプトの作成を進めている。
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