研究課題/領域番号 |
16J10818
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 真理 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | イスラーム経済 / 喜捨 / 慈善 / 所得再分配 / ザカート |
研究実績の概要 |
報告者の研究は、東南アジア・イスラーム世界で取り組みが始まっているザカート(喜捨)実践の次世代型再構築の試みに着目するものである。ザカートはイスラーム社会における相互扶助や慈善、所得再分配の理念を携えている。ザカート制度の現代的再構築に関する従来の研究では、マレーシアが志向しているような一元的徴収・管理にもとづいた再構築が高く評価されてきており、他方、多様性を包含するインドネシアのザカート実践もマレーシアに倣うべきだと評価されてきた。本研究では、事例としてインドネシアを取り上げ、世帯調査をはじめ、フィールド調査の実証的分析及び両国の比較分析により、ザカート実践の次世代型再構築のあり方には様々なアプローチがあるという多元的発展径路の視座から、現代的要請に対応したイスラーム型相互扶助制度の再構築の具体的取り組みの実態とその特徴および歴史的・現代的意義を探究している。イスラーム経済の中で注目される、生産的ザカートという概念についての探求、現代インドネシア社会においてどの程度認知され、管理団体でプログラムが組まれているのか、解明する。 平成28年度は、上記の研究課題の解明にむけて文献講読と長期的なフィールドワークを実施、およびこれまでの研究成果について積極的に発表を行った。研究成果の発表としては、東南アジア学会の関西例会での口頭発表、2度の国際会議における口頭発表を行った。3月にはジャカルタで行われた世界ザカートフォーラム(World Zakat Forum)では、世界中の研究者と知り合い、知的ネットワークを広げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、上記の研究課題の解明にむけて文献講読と長期的なフィールドワークを実施、およびこれまでの研究成果について積極的に発表を行った。 研究成果の発表としては、東南アジア学会の関西例会での口頭発表、2度の国際会議における口頭発表を行った。3月にはジャカルタで行われた世界ザカートフォーラム(World Zakat Forum)では、博士予備論文(修士論文に相当)およびフィールドワークに基づく研究報告を実施した。自らの研究成果の公表だけでなく、世界中の研究者と知り合い、積極的に知的研究ネットワークを構築することができた。またプロシーディングも出版されたことで、様々な研究者からフィードバックも得ることができた。 フィールドワークについては、インドネシアのマラン(ジャワ島)に長期滞在し、現地語を使用した綿密な聞き取り調査と資料収集を実施した。調査対象のサンプリングにあたり、十分な資料が日本では得られていなかったため、当初予定していたクリテリアの変更を余儀なくされ、研究計画の練り直しも必要であったが、これもより射程を絞った研究をする上での進展であったと言える。 総じて、これらの研究活動は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に引き続き行っている長期フィールドワークを精力的に実施していく。イスラーム的喜捨制度が現代インドネシア社会においてどの程度認知され、管理団体でプログラムが組まれているのか、特にその生産的使用について、東ジャワのマラン市をケースに解明を試みる。具体的には、管理団体の関係者への聞き取り調査による質的調査と、インドネシアの労働人口の7割弱とされる小規模小売業などのインフォーマルセクターでの労働従事者に焦点を当てた350世帯への量的調査を計画している。 また国際的な場での研究成果の発表、刊行なども積極的に推進したい。
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