研究課題/領域番号 |
16K00088
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
石浦 菜岐佐 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60193265)
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研究分担者 |
吉田 信明 公益財団法人京都高度技術研究所, 研究開発本部, 副主任研究員 (00373506)
神原 弘之 公益財団法人京都高度技術研究所, 研究開発本部, 主席研究員 (80373497)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイナリ合成 / 組込みシステム / 割込み処理のハードウェア化 / MIPS / 動的スケジューリング / バインディング / Erlang / マルチコア |
研究実績の概要 |
本年度は, 割込み処理のバイナリ合成, バイナリ合成における動的スケジューリング, およびバイナリ合成における回路規模抑制に関して下記の成果をあげることができた. 1. 割込み処理のバイナリ合成: (1) 通常処理と割込み処理が記述されたCプログラムからハードウェアを合成する手法において, 通常処理と割込み処理を1つの状態機械ではなく, 独立に動作する2つの状態機械で制御するハードウェアを合成する手法を提案し, その処理系を開発した. (2) この合成システムを, タイマー割込みで駆動されるモーター制御プログラムに対して適用し, 正しく動作すること, およびプロセッサで実行した場合に比べて処理性能が格段に向上することを確認した. (3) Erlang プログラムからハードウェアを自動合成する手法を開発し, さらにこれを分散メモリのハードウェア構成で実現する手法を考案した. 2. 動的スケジューリング: (1)これまでに考案した分散制御の複数データフローグラフへの拡張方式に基づく回路設計を行い, 回路規模と性能の評価を行った. (2)分岐予測および投機的実行を実現する方式を考案し, 回路設計を行った. 3. 回路規模抑制法: (1) バイナリ合成におけるバインディング処理の整数線形計画法による効率的な分割解法, および対象とする部分問題以外に実数制約を課す手法を提案し, 研究室で開発しているバイナリ合成システムにこれを実装した. (2) RSA暗号化回路およびErlangプログラムから合成される回路に本手法を適用し, 性能評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 割込み処理のバイナリ合成に関しては, 通常処理と割込み処理と独立したハードウェアに合成する手法を確立して, 合成システムも実装し, モーター制御への適用実験を行うことができた. また, Erlangプログラムからの合成においても, 現実的なハードウェアの生成に目処をつけることができた. ただし, μiTRONを利用したアプリケーションからの合成については現在調査中であり, まだ具体的な方法論は確立できていない. 2. 動的スケジューリングに関しては, 複数の基本ブロックからなる動作の効率的な制御法だけでなく, 分岐予測に基づく投機的実行まで実現することができ, また, 従来の集中制御手法との性能比較を行うことまでできた. 3. 回路規模抑制法に関しては, 整数線形計画法に基づく手法を実装し, 大規模な回路において大幅に回路規模が削減できることを確認できた. ただし, 回路規模はバイナリ合成系に続く論理合成系の性質にも左右されることが判明しており, この点を明らかにすることが課題として残っている.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究はおおむね順調に進展しているため, 今後は当初の計画通り研究を推進する予定である. 1. Erlangプログラムからのハードウェア合成に関しては, 実際にハードウェアを動作させ, 正しい実行結果が得られることを目指す. また, μiTRONを利用したアプリケーションからの合成に関しては, 例題をベースに考察を進め, どの範囲までの処理が扱えるかを明らかにする. 2. 動的スケジューリングに関しては, 手設計ではなく, CDFGから回路を自動生成する処理系を実装するとともに, 分散制御方式に適したスケジューリング/バインディング手法について検討する. 3. 回路規模抑制法に関しては, 回路分割やマルチプレクサの規模を抑制する手法について検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度多くの研究成果を上げたために成果発表が間に合わなかったこと, および, 新しい有効な手法を考案できたがそのシステム実装をまとめきれなかったために, 次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
新しい手法のシステム実装を完成させるとともに, 研究成果を各種学会で発表する計画である.
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