研究課題/領域番号 |
16K00137
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
植田 和憲 高知工科大学, 情報学群, 講師 (80335330)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | P2P / オーバレイネットワーク / クラスタリング |
研究実績の概要 |
本研究課題は,P2P(peer-to-peer: ピア・ツー・ピア)ネットワークモデルを前提とするアプリケーションやサービスを対象として,取得したい情報を持つコンピュータ(P2P ネットワークモデルにおいてはこれを「ピア」と呼ぶ)の検索効率の向上による探索パケット数の削減,情報転送時のネットワーク経路長の短縮あるいは転送回数であるホップ数の削減等によってもたらされるネットワーク資源消費量の抑制を目的とするものである. 平成28年度には,全体的なシステム設計の妥当性,あるいは有効性についての検討のための検証ソフトウェアの実装とそれを用いたシミュレーションを行うための環境を整備した.平成28年度内には単純なモデルを用いたが,平成29年度にはさらに詳細なモデルを用いて検証を行った.具体的には,採用した地域特性を考慮したフォトニックネットワークモデルに含まれるバリエーションのすべてを利用可能とするような拡張,日本の市町村における人口分布を考慮したピアの配置,などを行った.さらに,パケット数による比較だけでなく,検索対象となるコンテンツの分布のスケールフリー性の考慮なども行った.これらにより,より実際に近いモデルでの検証が可能となった.この検証結果については,平成30年7月の国際会議にて再度発表を行う予定である.この発表では,前述の評価の拡充に加え平成29年8月の発表にて得られたフィードバックについても考慮されている. 以上のように,当初の計画に沿う形で論文誌への投稿を計画中である.その内容には,平成29年8月と平成30年7月の国際会議で得られたフィードバックが反映される予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,P2P ネットワークモデルを前提とするアプリケーションやサービスを対象として,取得したい情報を持つピアの検索効率の向上による探索パケット数の削減,情報転送時のネットワーク経路長の短縮あるいは転送回数であるホップ数の削減等によってもたらされるネットワーク資源消費量の抑制を目的とするものである. 平成28年度には,既存のエージェントプラットフォームの API を活用した検証環境を構築し,それを用いて提案手法の有効性を評価した.ただしその評価は単純なモデルに基づくものであり,平成29年度入り本格的な評価を進めた.具体的には,パケット数だけでなく,地域特性を考慮したフォトニックネットワークモデルのバリエーションに基づく経路長についても考慮するなど,異なる指標による評価も行ってきた.そのために,平成28年度に実装したソフトウェアを拡張し,採用した地域特性を考慮したフォトニックネットワークモデルに含まれる3つのバリエーション(拠点の数が異なる)の切り替え機能の実装,ピアの配置アルゴリズムへの日本の市町村における人口分布の反映,などを行った.さらに,検索対象となるコンテンツの分布のスケールフリー性の考慮なども行った. 平成28年度に得られた評価結果は平成29年8月の国際会議にて発表し,そのフィードバックも得ているが,それを踏まえさらなる検証を進め,平成30年7月に再度国際会議での発表を予定しており,そこで得られたフィードバックを反映しさらに研究を推進する.平成30年度には,7月に予定されている国際会議での発表でのフィードバックも考慮しつつ,これまでの評価をまとめた上で,当初計画通り論文誌の投稿を計画している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題には,P2P ネットワークモデルに基づくネットワークアプリケーションあるいはネットワークサービスを対象として,取得したい情報を持つピアの検索効率の向上による探索パケット数の削減,情報転送時のネットワーク経路長の短縮あるいは転送回数であるホップ数の削減等によってもたらされるネットワーク資源消費量の抑制を可能とするための手法が含まれる.具体的には,ピアの位置情報や隣接状況といったネットワークに関する情報やピアの保持するコンテンツ等の情報を複数の論理ネットワークを階層的に配置(オーバレイ)してそれらを状況に応じて切り替えることで目的を達成する.提案システムは,ここで用いられる具体的な論理ネットワークの構築方法に依存するものではないため,現時点で実装され評価に用いられているアルゴリズムに加え,よりよい結果を得るためのさらなる改良や他アルゴリズムの採用等の検討を行うことが必要である.また,複数の論理ネットワークを切り替える際に用いられる指標として問い合わせ回数や保持するピアの総数に基づくものを想定しているが,この指標についてもさらなる検討が必要である.さらに,ソフトウェアを用いた検証においても,現在想定しているコンテンツ共有システムとは異なるネットワークアプリケーションあるいはネットワークサービスを想定して上で異なるパラメータセットを用いることが考えられる. 本研究課題の成果は,現時点で得られている評価および検証結果を踏まえる形で平成30年度での論文誌への投稿を計画しているが,前述の課題を踏まえ,課題を細分化し複数の研究課題へと発展することが見込まれる.継続して,対外発表や論文誌への投稿を通してこれらの研究を推進する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者との打ち合わせの比率においてスケジュールの都合から遠隔ベースのものの割合が高まったことと,平成29年度の国際会議での発表において得られたフィードバックを反映させた対外発表を再度行うのが望ましいと判断したため.
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