コンピュータグラフィックス(CG)分野では水のような液体の挙動をアニメーションとして生成する際に,流体シミュレーション手法の一種である粒子法が計算コストの低さや並列計算との親和性の高さからよく用いられている.本研究では粒子法とCG分野で一般的に用いられているポリゴンモデル等の表現方法の違いによるギャップを,粒子法の改良により埋めることで,固体と液体の混成シミュレーションにおける精度と計算効率を向上させ,より複雑な現実世界の自然現象にコンピュータシミュレーションを可能とすることを目的としている. 本年度は昨年度提案した境界形状付近の流体粒子位置に合わせて境界内の粒子の位置を変動させる動的な境界粒子配置手法の実験を行い,その有効性を確かめるとともに,固体だけでなく複数の液体や気体や液体を扱う場合にその境界における計算を安定して行う手法も開発した.密度の異なる液体の表面において粒子法による密度をそのまま用いると粒子分布が不均一になり,計算の正確性と安定性が低下する.これを解決する手法として近傍粒子の数に基づく粒子数密度という概念を用いる従来手法を導入し,その問題点であった非圧縮性を同時に解決できるMultiIISPHと呼ぶ方法を新たに提案し,固体を含めて複数種類の液体の境界が存在する様な複雑なシーンでも安定した計算が可能であることを実験で確かめた.この研究成果はCG分野の著名な国際会議であるSIGGRAPH Asia 2018でポスター発表するとともに,情報処理学会英文論文誌にも投稿中である.また,粒子法とポリゴンモデルのインタラクションによるシミュレーションとして粒子法による大規模な波のシミュレーションとメッシュモデルによる地形生成を組み合わせることで新しい海岸地形生成手法も開発した.この成果は画像電子学会論文誌に投稿し,採択された.
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