研究課題/領域番号 |
16K00391
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 武幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (00437261)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝子ネットワーク / 代謝ネットワーク / GPRネットワーク / 整数線形計画法 / NP完全問題 / アルゴリズム / 細胞の制御 |
研究実績の概要 |
ブーリアンネットワークを初期状態から目的状態へ指定されたステップ数以内で誘導する最小数の制御節点を見つける問題のNP困難性を証明し、整数線形計画法に基づき厳密解を求める手法を開発した。また入次数の制限されたランダムに生成されたブーリアンネットワークの最小制御節点集合の平均サイズを数理的に解析した。計算機実験の結果は理論解析の結果と良い整合性を示した。実際の生物におけるブーリアンネットワークでも計算機実験を行い、理論解析の有効性と一般性を示した。この研究はブーリアンモデルの生体ネットワークを効率的に制御するための基礎的研究であり、今後ブーリアンモデルだけでなく代謝流束モデルと統合拡張していく際にも有効な手法となる可能性がある。
また正常な細胞と異常な細胞の遺伝子発現データから影響度の大きい遺伝子を見つける問題に対する研究を行った。この研究では代謝ネットワークの数理モデルと、正常細胞と異常細胞における遺伝子発現パターンを組み合わせ新規的な計算手法を開発した。代謝ネットワークを異常状態へ導くk個の遺伝子ノックアウトを見つける問題をブーリアンネットワークを用いて数理モデル化し、整数線形計画問題で定式化した。この手法を正常細胞と頭頸部癌の遺伝子発現データに適用した。また計算機実験により本手法の有効性を検証した。この研究は当初予定していた最小反応削除問題を、ゲノムスケールの数理モデルに適用するために問題設定を最小化問題から定数kを与える形式に変換することにより対応したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブーリアンモデルによる遺伝子ネットワークを制御するための最小数の遺伝子セットを発見するアルゴリズムの開発実装や、正常細胞と異常細胞の遺伝子発現データを代謝ネットワークと組み合わて影響度の高い遺伝子を発見する問題に対するアルゴリズムの開発実装が初年度の主な研究成果であった。これら以外にも混合整数線形制約モデルを用いて微生物の標的化合物の生産量を増大させるゲノムのデザイン戦略に関する研究も進行中であり、初年度としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の混合整数線形制約モデルに関する研究をさらに発展させる。反応ノックアウト戦略を計算する問題だけでなく、遺伝子ノックアウト戦略を計算する問題にも取り組む。また混合整数線形制約モデルを等価変換する問題や、生物実験のデータを用いてモデルを修正発展させていく問題も研究する。現在は微生物のモデルやデータを用いて研究しているが、中長期的には他の生物種、特に癌細胞に関する研究に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に掲載される見込みであった論文の出版が次年度に持ち越されたことにより、掲載費の支払いや、その後に予定していた出張や学会発表、またその後に予定していた計算機の購入を次年度に延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に支出する予定であった計算機の購入、論文の出版、学会発表のために使用する予定である。
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