研究課題/領域番号 |
16K00391
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 武幸 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00437261)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 代謝ネットワーク / アルゴリズム / 生育結合 / 線形計画 / 有用物質生産 / 反応削除戦略 |
研究実績の概要 |
制約モデルの代謝流束解析は、微生物を用いた有用化合物の生産に関するシミュレーションにおいて有用である。近年のDNA合成技術の発達に伴い、有用化合物を生産する最小の代謝ネットワークのデザインの計算が近い将来重要になるかもしれない。そこで本研究では、細胞の成長率と目的化合物の生産率に関する制約を小さなグリッドを用いて表し、グリッドごとに最小の代謝流束分布を計算して、最適な代謝のデザインを見つける手法を開発した。 代謝流束解析において、与えられた制約の下で細胞成長率を最大化してシミュレーションを行うと、シミュレーションにおける代謝分布と実際の代謝分布が近くなりやすいことが知られている。この細胞成長率を最大化するモデルにおいて、本研究でデザインを計算した代謝ネットワークは、多くの有用化合物に対し、従来手法よりも生産率が高くなる。 iAF1260はゲノムスケールの代謝の制約モデルであり、微生物の代謝シミュレーションの研究において、しばしばベンチマークとして用いられる。本研究ではiAF1260に含まれる化学反応セットの部分セットを用いて最小代謝ネットワークを計算した。なお計算機実験により、細胞の成長率と目的化合物の生産率に関する制約を表すグリッドのサイズが、計算結果に大きく影響を与えることが示された。 細胞成長率が最大化される問題設定において、目的化合物の生産率の最悪ケースを考慮した場合、シミュレーション上、従来手法は実験に用いた全目的化合物の50%以下しか生産できないのに対し、開発手法は90%以上生産できる。 本研究成果はBMC Bioinformatics誌より出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、代謝ネットワークの制約モデルに関する研究は平成28年度の計画にのみ記載されていた。本研究は制約モデルの代謝ネットワーク制御手法に関する重要な成果であり、当初の研究計画とは異なるものの、十分な成果をあげることができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に開発し、BMC Bioinformatics誌で公表した成果に関し、国内外の学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の研究成果が論文として受理されるのが遅くなったため、令和元年度に対外発表する必要が生じたため。
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