本研究では、複数の数値モデルによる予測結果と観測データを組み合わせて、統計的な解析を行い、海洋大気中で観測された高い鉄溶解率に関する謎の解明を試みた。 その結果、エアロゾル中の高い酸性度による人為起源鉄の溶出速度増加を予測した数値モデルが、鉄溶解率の高さや変動を最もよく再現していることが明らかにされた。本結果から、大気汚染に由来するエアロゾルでは、高い酸性度の溶液中で光化学反応によって人為起源鉄が水に溶けやすい性質に変化していることを示した。また、従来考えられていた自然起源の酸化鉄とは異なる人為起源の酸化鉄が、陸から遠く離れた海洋生態系へ栄養塩をもたらす重要な役割を果たすことを示唆した。
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