研究実績の概要 |
本研究初年度に天然海域で採取した紅藻類オゴノリ科海藻成熟体から単藻培養株を調製した。当該株が非成熟性であることを連続培養実験により明らかにした。エアレーション培養により、本研究期間を通じて当該単藻培養株を継続的に使用できる状態を保つことに成功した。単藻培養株の獲得は、微生物由来物質の影響評価に必要なことであり、非成熟性株は水質浄化海藻として優れた性質である点で価値がある。微生物由来物質であるインドール3酢酸(IAA)あるいはIAAと海藻付着共存微生物の添加による海藻成長量と栄養塩吸収能上昇を見出した。IAA、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、ベンジルアミノプリン(BA)を比較し、オゴノリ科海藻切片の成長加速効果はIAAが最も高いことを明らかにした。IAAで成長加速したオゴノリ科海藻のタンパク質画分に硝酸還元酵素活性を検出した。このことからIAA添加が硝酸還元酵素活性へ影響を及ぼすことが示唆された。またIAA添加濃度による窒素吸収特性(硝酸態窒素吸収量/アンモニア態窒素吸収量)の変動を見出した。酸化防止剤含有の抽出溶媒を抽出工程で用いるカロテノイド分析方法を開発し、IAA添加濃度により海藻中のβカロテン濃度が変動することを明らかにした。反応型HPLCを用いた還元糖の高感度分析法により、IAA添加濃度により海藻中のグルコース濃度が変動することを明らかにした。さらにIAA添加濃度により海藻タンパク質の電気泳動挙動が異なることを見出した。以上のことから、IAAは紅藻類オゴノリ科海藻の代謝物質変動(糖、カロテノイド、電気泳動でのタンパク質挙動、酵素活性、窒素吸収特性の変動)に関係していることが示唆された。以上の結果は、IAA等の微生物由来物質により海藻の成長量や窒素吸収特性を変動できる技術の基盤データとして価値があると考えられる。
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