独占レント以上に企業の政治活動が強く関係すると考えられるのは移転レントである。具体的には補助金の取得や法人税の控除などで、企業の政治活動が最も直接的に反映されると考えられる。企業の財務データから独占レントを算出する方法を応用して、移転レントも同時に算出する方法を考案した。法人税支払いを企業の生産活動における一種の生産要素と考える。公共サービスの供給者である政府に対して、資本移動を自由に行える大企業は需要独占的な立場にある。そこで生産要素市場における需要独占モデルを適用して、企業が得ている独占レントと移転レントを同時に算出するモデルを構築した。米国のS&P500の銘柄企業で米国のLobbying Disclosure Act(LDA)に基づくデータベースにロビイングデータが存在した234社の動態的レントをMergent Onlineの財務データから算出し、これらの企業の政治的支出を捕捉したLDAデータとの相関関係・因果関係を現在分析した。 また企業が支払うべき規範的な法人税という考え方を提示した。製品市場や生産要素市場から得た独占レントや公共サービスのために本来支払うべき移転レントを足し合わせたものからシュンペーターレントを差し引いたものが規範的な法人税率という考え方に立つと、米国では80年代以降実際の法人税率が下降しつづけているが、ちょうど下降した税率分かそれ以上が規範的な法人税に含まれることがわかった。これらの結果は現在ジャーナル投稿中である。
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