研究課題/領域番号 |
16K00697
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
久保 雄広 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (80761064)
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研究分担者 |
曽我 昌史 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80773415)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生態系サービス / 生物多様性 / 観光 / レクリエーション / 国立公園 / 世界遺産 / 環境評価 / ソーシャルメディア |
研究実績の概要 |
本研究では、環境評価手法等を用いることで、生物多様性および観光レクリエーション・サービスをはじめとする文化生態系サービスの価値を定量的に評価し、マップ化することで効果的な自然保護区を提案することを目的としている。 平成29年度は昨年度に引き続き、主に奄美大島を対象として、生物多様性と文化生態系サービスの評価に取り組んだ。過去に収集したデータに加え、新たに夏季の観光動態データを収集・解析することで、多時点間で観光客を惹きつけている生態系および自然要素の抽出に取り組んだ。その結果、世界自然遺産指定区域外にある沿岸地域が高い観光レクリエーション価値を有することが示唆された。また、選択型実験を用いて、野生動物(アマミノクロウサギ)に関する観光レクリエーション需要を分析した結果、野生動物が観察できる確率と見れなかったときの返金率が人々の効用およびガイドの期待収入に大きく影響することが明らかになった。このことは効果的な自然保護区の設定など、保護施策の有無が地域経済に直接影響することを示唆した。 さらに、本年度は生態系サービスの評価に向け、環境評価手法(選択型実験・トラベルコスト法)に生態学的知見やICT(Information and Communication Technology)を用いたデータソースの応用・統合、および、行政文書等の定性データの定量解析に向けた評価手法の発展にも取り組んだ。 上記の結果の一部は国内学会で発表するとともに、国際誌に原著論文として投稿し、出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観光レクリエーションに関するデータを当初予定していた以上に収集・解析することができた一方、生物に関する現地調査は許認可の問題等も重なり若干遅れている。後者の問題解決に向け、既に自然環境保全基礎調査等のデータベースで補完をはじめており、その他地域住民等が享受している生態系サービスの認識と合わせて全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
観光客および地域住民が享受する文化生態系サービスについては過去2年間の方針を引き継ぎ、アンケート調査やインタビュー調査などから得られたデータの統計解析を進める。一方、生物に関する現地調査は許認可等の問題も含めて困難が予想されることから、既に構築されているデータベース(自然環境保全基礎調査等)を援用することで相補的な解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
生物多様性調査等に関する許認可に時間を要ししたため、調査の一部を次年度に延期したため。
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