近年の大学選抜制度は学力テスト方式、AO方式など様々な形式が混在しており、これらの成績から適切かつ整合的な合否判定をする必要が生じている。本研究ではこのような多様な選抜試験の成績を用いて妥当性高く合否判定するための支援システムを開発することを目的とした。 2019年度はAO試験に多く採用されている面接評価に着目していくつかの実験を行い、面接評価と一定期間(入学後)の学力や、パーソナリティ特性との関係を構造方程式モデルを用い統合的に分析した。具体的にはパーソナリティ特性の1つである勤勉性が面接評価の結果に影響を及ぼしていることを明らかにしたが、この勤勉性は入学後の学力には直接的な影響を及ぼさないという結果が示された。つまり、学生が持つ心理特性は入学時の面接試験には有利に働く可能性があるが、その後の学修に与える影響は少ないということである。この結果は、米国で行われた先行研究の結果と異なっている。これは本年度に行った実験がより短期間で限定された状況で行われたことが影響したのかもしれない。あるいは本研究で着目された勤勉性は文字通り粘り強く物事を遂行する傾向性であり、日本人が好む評価基準の1つであるため、日本の入試システムの特徴を表している可能性もある。いずれにしろ、今後の追加実験などでより検証する必要がある。 これらの研究の結果、2019年度は国際学会での発表1報、国内学会での発表2報、雑誌への掲載1報を得た。
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