本研究は、因果関係を推定する方法の論理構造の解明、因果概念の哲学的分析、推定法考案者の思想的背景の究明を通じて、科学における因果推論の哲学的意義を明らかにするものである。具体的には、実際の科学における代表的な2つの因果の推定法であるランダム化比較実験とベイジアンネットワークによる統計的因果推論を考察し、以下の3点を明らかにした。(1)両推定法の諸前提と論理構造の共通点と相違点、(2)両推定法における因果概念の意義を明らかにする。(3)両推定法を考案したR.フィッシャーとS.ライトの科学観を明らかにし、両者の思想的背景が両推定法へ及ぼした影響を解き明かした。
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