研究課題
研究代表者である八木は,ネパール政府測量局においてブディガンダキ川,トリスリ川流域に対する空中写真判読による地すべり地形判読を進めるとともに,年代測定試料採取地選定のための地形面区分を行い,それらをもとにボテコシ川流域で地形・地質調査を実施した.また持ち帰った空中写真デジタルデータをもとに国内でも空中写真判読を進めた.その結果,カトマンドゥ西部のマハバーラト山脈や低ヒマラヤ帯の地すべり分布図を完成させた.研究分担者で放射線蓄積量年代測定担当の松四勇騎は,2016年11月に代表者・八木とともに八木が選定した年代測定試料採取候補地点であるボテコシ川左岸の高位浸食面・段丘やマルシャンディ川中流域中位段丘面において試料12点収集し京都大学に持ち帰った.その後年代測定のための前処理を進めている.研究分担者である佐藤浩は,ボテコシ川左岸流域でInSAR画像解析を行い,2014年の地すべり災害跡におけるその後の地形変化,特に2015年地震による変位やその後のモンスーン期の地形変化をモニターを行った.その結果,2015年地震によって地表がランダムに変動したことを明らかにしたほか,地震後の乾季に於いては大きな変動が発生していないことも明らかにした.研究分担者である若井明彦は,ボテコシ川及びトリスリ川上流域で地震動による山地斜面の変形を地下水を考慮しない条件下で数値シミュレーションをおこなった.その結果遷急線周辺での大きな地形変形の発生を確認した.しかし山体斜面深部まで変形が達しているかはまだ明らかに出来ていない.
2: おおむね順調に進展している
地すべり地形判読は,河谷沿いの岩盤変形を推定する点で重要な情報でありその特定は今後の研究を進める上で不可欠である.その点で本研究の目的を達成するための基礎データが得られつつあるといえる.また,空中写真判読を進めることで年代測定試料採取候補地点を探し出すことが出来ることからもおおむね順調に研究を進められていると判断出来る.ボテコシ川沿いで放射線蓄積量年代測定用の岩石試料を多数採取できたことは本研究の中心的課題を明らかにする第一歩である.その点で現時点では課題達成のための初段階にたどり着けたものと思われる.現段階では岩石試料から石英粒を取り出す前処理段階にあり,試料損失率も測定に影響しない程度であることから測定が待ち望まれている.InSARによる微細な地形変形把握については,2014年の地すべり災害地が地震時に多数の岩盤崩落や浅層崩壊を受けたことを明らかに出来た.しかし,地震によって深層地すべりにまで発達したものもなかったこともあきらかにできた.雨季と乾季による地形変化にも差があることが明らかになっている.数値シミュレーションでも地震動による表層破壊を再現できた.以上を勘案すれば本研究初年度はおおむね進展できているものと思う.
2016年度作成した地すべり地形分布図についてデジタル入力化を進める.それらを地質情報や,地形起伏情報と重ね合わせることで深層地すべり発生場の地形・地質的特徴を明らかにし,その結果を2017年11月開催の国際応用地質学会アジア地域会議に於いて公表していく.2016年度採取した試料の年代測定を進め,2017年11月カトマンドゥで開催される国際応用地質学会アジア地域会議において公表していく.さらに新たに異なる流域で,突発的土石流災害や山体崩壊に由来するデブリ堆積物の年代試料採取を行い年代測定に向けた試料処理を進める.微細地形変化の有無についてInSAR解析実施可能な地域の選定を行い,2015年ネパール・ゴルカ地震被災地域で重力的な地盤変化の進行について検討する.ボテコシ流域の地震にともなう地形変位の有無について上記学会での公表についても検討する.ボテコシ流域や,トリスリ川流域に於いて行った地震時の数値シミュレーション結果については学会発表を進める.さらに雨季を考慮した数値シミュレーションを試みる.
研究分担者・佐藤浩氏が2017年度分と合算して衛星データを取得することにしたため.
2017年度配分の予算と合算してInSAR画像を取得することを計画している.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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