今年度は,主に既存の統計等を用いて都心側の調査を行い,東京23区における1990年代以降の変化の実態を明らかにした。この期間の土地利用の変化について要点を述べると,脱工業化と高層化の2点にまとめられる。まず,脱工業化について述べる。1994年に工場だった土地のうち,2014年も工場として使われているのは17%にすぎない。大半は他の土地利用に変化しているのである。その多くは,低層建物(44%)と高層建物(26%)に変化している。そのほかには空き地(5%)への変化もみられる。なお,1984年~1994年の土地利用変化もみたところ,1984年に工場だった土地の80%は,1994年も工場として使われていた。そのため,脱工業化の動きは1990年代以降に本格化したといえる。次に,低層住宅の変化についてまとめる。1994年に低層住宅だった土地の94%は,2014年に低層建物として使われている。2014年時点で高層建物に変化しているのは,4%にすぎない。そのため,低層住宅に関しては,一見すると変化が少ないように思われる。しかし,低層住宅は23区全体に占める面積が大きいため,わずかな割合の変化でも面積的には無視できない広さになる。なお,1984年に低層住宅だった土地が1994年に高層住宅へ変化している割合は1%であった。先ほどの工場から高層建物へ変化して割合も無視できないことと合わせて考えると,この期間のもう一つの変化は,高層化という言葉で表すことができると思われる。低層住宅から高層建物に変化している地域は,都心から西側の城西地区に多く見られる。中でも都心に近い,港区,新宿区,渋谷区といったところで高層建物に変化している地点が多い。高層建物には,オフィスビルや商業施設,あるいはその複合施設も考えられるが,変化している地点の分布からみて,マンションが多くを占めていると思われる。
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