研究課題
平成29年度(2年目)の計画は、ハプティクス・バイラテラル制御を応用展開して脳に錯覚を与える擬似体験手法を提案・改良すること、疑似体験手法を実現するハプティクス・バイラテラル制御装置を開発すること、さらに、脳に錯覚を起こすことで脳血流にどのような変化があるかを調査し、疑似体験手法による脳機能リハビリテーションの有効性を評価する方法を提案することであり、この計画に従って以下を実施した。初年度に開発した脳に錯覚を起こさせるために必要なモーション制御機能を実現する動作モニタ装置および2軸テーブル駆動装置を4軸対応に改良した。さらに、加速度センサを2軸分取り付け、振動刺激が両足軸に独立に伝わるようなハプティクス制御および転倒防止を目的としたバランス保持機能をバイラテラル制御で実現した。具体的には、両足に加えて両腕も独立駆動できるように、小型のスライドシステムを本研究費で購入し、新しく4軸独立制御、ハプティクス制御、バイラテラル制御が可能となるように機能追加した。次に、脳にどのような変化が起こっているのかを把握するため、脳血流測定装置(NIRS)を利用して脳血流酸素濃度を測定した。通常のリハビリ動作時と脳錯覚を起こすと考えられるリハビリ動作時のデータを統計解析(ヒストグラム、周波数解析)したが違いが見られなかった。そこで、機械学習(人工知能)を利用して、それぞれのデータの特徴量を算出し、幾つかの分類方法を利用して評価したところ、92%の精度で通常動作時と錯覚動作時の脳血流データが分類できた。上記研究成果を、産業技術総合研究所主催の第2回ニューロリハビリシンポジウム2017においてポスタ発表した。さらに、国際学会IEEE-CYBER2017において口頭発表し、優秀論文賞(Finalist of Best Paper Award)を受賞した。
1: 当初の計画以上に進展している
脳錯覚(刺激)を与えるアイデアは本研究開始時からあったが、脳の状態を評価する方法については、脳血流測定装置で評価するところまでしか考慮していなかった。実際に脳血流を測定すると、データ数が膨大になること、測定データはノイズの集まりのような信号で、人間ではデータの特徴がつかめなかったため、機械学習(人工知能)を利用した解析・評価にチャレンジした。その結果、通常動作時と脳錯覚動作時での脳血流状態に違いがあることが明らかになった。当初の計画にはなかった機械学習によるデータ解析・評価手段を新規に開発できたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
平成30年度(最終年度)は、脳血流測定装置の代替となるようなセンサにより脳の活性化を評価する方法を探索する。また、初年度に購入した計測実験コントローラ(AD5436)をもう1台購入し、これまでのリハビリ動作(昇降運動が基本)とは異なる動作(例えば電気刺激等)が可能となるリハビリ装置を製作し、前年度までに製作した装置も含めて、脳錯覚(刺激)に最適なリハビリ動作方法を提案したい。さらに、本研究の目的として、研究開始時に考えていた脳錯覚による体機能のリハビリ制御装置の開発という観点に加えて、体刺激(リハビリ動作)による脳のリハビリ方法の開発という観点も考慮に入れて、脳の再組織化・体機能の回復に有効なリハビリ動作の開発に取り組んでいきたい。
どのようなリハビリ動作が脳錯覚(刺激)に有効かどうかを探索するため、今年度製作した昇降動作を基本とした装置の他に、新たなリハビリ動作によって脳錯覚を生じさせる装置の製作を昨年末(平成29年12月頃)から考えていたが、計測実験コントローラ(初年度に購入したAD5436)を追加購入する必要があり、納期(3ヵ月)と価格(140万円)の関係で、今年度分(平成29年)残高と次年度分(平成30年)予算を合算しなければ購入できないことから、次年度使用額が生じた。次年度(平成30年度)早々に、計測実験コントローラ(AD5436)を購入し、現時点では筋肉に対する電気刺激による脳錯覚リハビリ装置の開発を計画している。
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IEEJ Transactions on Industry Applications
巻: 137 ページ: 746-752
https://doi.org/10.1541/ieejias.137.746
http://www.kyusan-u.ac.jp/nyushi/videolecture/lecture11.html