研究課題/領域番号 |
16K01977
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
内田 綾子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (20283468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ / 先住民 / 西部 / 土地開発 / 冷戦 |
研究実績の概要 |
2020(令和2)年度は、前年度に検討したナヴァホのウラン開発との関連で、第二次世界大戦後のアメリカ南西部における石炭開発と土地問題について検討した。ナヴァホ保留地では1950年代にウラン採掘ブームが起こったが、その危険性と先住民労働者の健康被害が徐々に明らかになった。このウランに代わって、1960年代に注目されたのが石炭であった。とくにオイル・ショック後にアメリカはエネルギー資源の自給を目指し、石炭採掘が加速した。 アリゾナ州北部の先住民保留地に位置するブラックメサは、1882年の行政命令によってナヴァホとホピが共同で使用してきた。しかし、世界有数の炭鉱として知られるようになり、石炭採掘リースを促進するために保留地の境界が定められることになった。1950年代以降、土地分割をめぐって、部族の顧問弁護士や連邦政府、地元の連邦議員、企業等が介入し、問題が複雑化した。そして1970年代から大規模な露天掘りが本格化し、石炭運搬のために膨大な地下水が汲み上げられ、深刻な環境問題が引き起こされた。さらに、1980年代にかけて数千人のナヴァホ住民がブラックメサから立ち退きを迫られる結果となった。 このテーマについて、以前にアメリカで調査した史料のほか、新たな文献を取り寄せて分析し、論文を執筆して大学の紀要に発表した。とくに1950年代から70年代にかけて、ブラックメサ問題に関わったホピ顧問弁護士の役割に注目して考察した。先住民の土地問題で、非先住民の顧問弁護士が部族の意向や利益を代弁せずに問題化した点は、前年度に検討したウェスタン・ショショーニの場合と共通している。 なお、今年度は補助事業期間を延長したうえで、海外出張を計画していたが、コロナウィルスの影響により実現できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は最後の海外出張を予定していたが、コロナウィルスの影響により実現できなかった。そのため研究計画に変更が生じ、補助事業期間の再延長を申請したところ、承認された。
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今後の研究の推進方策 |
2021(令和3)年度は最終年度として、これまでに行った史料調査と発表した論文を振り返って冷戦期の西部開発と先住民政策について総括し、研究報告書をまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020(令和2)年度は海外出張を計画していたが、コロナウィルスの影響により実現できなかった。そのため研究計画に変更が生じ、補助事業期間の再延長を申請した結果、承認された。最終年度は、さらに必要な文献や史料を補って考察し、これまでの研究を総括したい。
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