本研究はグローバルな現代社会において、超国的かつ相互関係性の観点から、ビジネス・エシックスが直面する異文化間コンフリクトの諸問題にどのように取り組めばよいのかを検討した。ビジネス・エシックスがこれまで主に守備範囲としてきた道徳的主体としての企業活動の倫理、およびCSR(社会的責任)に回収できない領域に踏み込み、文化や価値観の多様性がビジネス・エシックスと密接な関係性を有し、文化の果たす役割の重要性を明確にした。異文化間コンフリクトは不可避であるが、倫理とは「人間の尊厳」「承認」「ケア」といった人間にとっての中核となる価値に依拠した、相互の文化的差異の認識に他ならないことが明らかになった。
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