研究課題/領域番号 |
16K02138
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
堀田 義太郎 東京理科大学, 理工学部教養, 講師 (70469097)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 平等主義 / 差別 |
研究実績の概要 |
2016年度は当初計画とは異なり、2017年度予定の研究内容を遂行した。具体的には、差別概念の分析にとって「集団」という要素の重要性について、理論的に明らかにする研究を行った。 「集団基準」は、被差別者を、歴史的・社会的に不利なまたは劣位化されている集団の成員(マイノリティ)に限定する、という基準だが、その理論的な位置づけについては必ずしも詳細に検討されておらず、批判もある。そこで2016年度は、当初17年度予定の研究、第一に「集団基準」に批判的な議論を検討し、第二に、とくに性差別に関する議論を踏まえて、差別の「構造」または「体系性」という観点から経験的な記述と観察に基づく具体的な肉付けを与える研究を行った。 第一の、「集団基準」に対して批判的な議論の検討としては、とくにThomsen(2012)およびHorta(2010)の議論を対象として、「集団基準」を欠いた差別概念の定義の利点と難点を明らかにした。差別概念の形式的定義にとって「集団基準」を導入することは、たしかに明確さを欠くという案点はある。他方、差別概念に関わる諸実践の意味の解明という課題を重視する立場を取れば、「集団基準」は差別概念の解明にとって不可欠であり、これを欠いた定義は不適切である。社会的実践の解釈という側面から集団基準は差別概念の説明にとって不可欠であると言える。 第二の、性差別に関する研究は、社会学的な分析論を踏まえ、差別の「構造」「体系性」と呼ばれる状況を経験的な記述として再確認した。 また、これらの研究の過程で、言語および行為の意味に関する議論に基づいて、より一般的な説明を試みる手掛かりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画のうち、2017年度予定の研究内容を遂行した点で、予定とは異なっているが、差別概念における「集団」概念の重要性に関して、言語哲学の知見の有効性をあらためて確認し、来年度以降の研究に関して重要な手掛かりを得た。また、具体的に性差別に関して、日本国内の代表的議論の検討を踏まえて研究会を行いフィードバックを得た。 他方で、2016年度に計画していた研究、つまり差別概念と平等概念および平等主義との関係性については、予定通りに研究を進めることができていない。ただ、差別における集団基準に関する研究から、間接的にではあるが、平等理念の義務論的解釈に理論的に親和性があるという示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度に予定していた研究を遂行する。第一に、差別概念を平等理念や平等主義との関係で規範的に明らかにする研究を行う。第二に、平等理念に依拠しない他の差別論と比較検討を行う。 また、2016年度に示唆を得た言語哲学の知見を踏まえた差別概念の分析、とりわけ「集団基準」の背景でもある諸行為が連関して体系的に「差別」を構成するという点について、より一般的な理論的分析を行う。
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