研究課題/領域番号 |
16K02199
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
厳 錫仁 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20387111)
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研究分担者 |
佐藤 貢悦 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80187187)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 李退渓 / 熊本実学派 / 心論 / 大塚退野 / 横井小楠 / 元田永孚 / 日本儒学 |
研究実績の概要 |
2018年度では、熊本実学派の源流である大塚退野の資料及び横井小楠と元田永孚の文献を検討しながら、主に朝鮮の李退渓思想との比較を試みる研究を行った。その研究成果の一部は、11月の「第27次退渓学国際学術会議」(ベトナムハノイ人文社会科学大学)において発表し、韓国語と日本語の論文として取りまとめた(「熊本実学派の退渓学の受容と影響―退渓学の観点からみた日韓関係の模索」)。韓国語の論文は『退渓学論集』23号に掲載し(12月)、日本語論文は今年の上半期に発刊される予定である(『倫理学』35号)。 この研究は、大塚退野、横井小楠、元田永孚の言説にみえる退渓学の受容様相を再検討したもので、熊本実学派の学者たちと退渓学との一次的な接点と影響は心術工夫=心学にあり、これを確認する作業として熊本実学派の学者たちの李退渓評価や、荻生徂徠と山崎闇斎に対する批判的な言説を検討した。これは、日本思想史における退渓―熊本実学派の位置や思想的特徴を強調するための装置的な意味を持つ。そして最後に、この心術工夫の重視は天人合一論と相俟って、他国との関係(外交)において「是(まこと)心」、「天地仁義の大道」と「至誠惻怛」の態度、実生活のなかの「人を愛する心の仁」に基づいてこそ望ましい日韓関係も築かれることを、退渓と彼の後継者としての熊本藩の学者たちが示唆していることを論じた。 このほかに、以前から構想を練っていた明治期の儒学の位置・役割を論究する論文の、「元田永孚の帝王学とその時代的意義」を取りまとめて、発表を行う準備を整えた。研究分担者(佐藤貢悦)は11月のハノイの国際学術会議に一緒に参加し、「日本儒教勃興期の思想状況に関する再検討」という論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度中にこの研究で取り扱う基礎的な資料の検討・分析が大方終わり、それに基づく具体的な研究成果の構想もできており、これまでその一部成果を日本と韓国、中国の学会や雑誌において発表することができた。とくに本年度に行った「熊本実学派の退渓学の受容と影響」の研究は、本研究の全体テーマの基軸をなすもので、その特徴を心術工夫として捉え、さらに韓国語と日本語の両方で取りまとめたことは、研究の達成度において一つの進展であると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
この研究の最終年度にあたり、これまでの研究を集約していく。 1)幕末・明治期の儒学(朱子学)の位相と役割を、横井小楠と元田永孚の研究を通して論究する。 2)熊本実学派と李退渓学との比較を、今度は彼らの異質点に重点を置いて論究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度中に研究調査や研究関連のシンポジウムを計画していたが実現できなかった。今年度の調査・シンポジウム開催の費用に充てたい。
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