研究課題/領域番号 |
16K02199
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
厳 錫仁 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20387111)
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研究分担者 |
佐藤 貢悦 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80187187)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 李退渓 / 熊本実学派 / 心論 / 大塚退野 / 横井小楠 / 元田永孚 / 儒教的皇道主義 |
研究実績の概要 |
今年度は、横井小楠と元田永孚の思想営為の検討を中心に、本研究が目指している日本と韓国の客観的な学術交流史の定立と、明治期における日本儒学の特質の解明という目的に向けて、研究全体の論理的な整合性を考慮しながら議論をまとめようと研究を遂行した。 一つは、元田永孚と儒教的皇道主義というテーマで、元田における儒教思想と皇道主義の関係、つまり儒教思想を活動の基盤としながらも、儒教の経典を「皇道の註釈」 として表現する元田の儒教的皇道主義の内容如何を問い直すものである。元田の皇道主義的な言説は、彼の思想営為(儒教思想)を否定的・消極的な方面に向かわせる要素として議論される場合が多いが、彼の真意はどこにあったのかを、儒教的易性革命論と天皇地位の血統論、国教論における儒教と皇道の位置づけ、帝王学―政治の中核とは何か、という三つの柱を中心に明らかにしようと努めた。ここでは元田の以後、次第に色濃くなっていく国家主義的な傾向の日本近代儒教の特徴を前提にして、元田の儒教的皇道主義がもつ時代的意義、儒教思想の普遍性と日本的特殊性の関係、さらには元田の儒学者としての自負や役割は、儒学の理想を実現しようとする儒学者のロマンであることを吟味した。 もう一つは、李退渓と熊本実学派の関係を考察するものである。これはすでに発表した「熊本実学派の退渓学の受容と影響」に継続するものであるが、ただ前記の論文が心術工夫=心学を通して退渓学と熊本学派の接点・影響を論じたものであれば、今度は逆の視座で相違点を探し出す試みである。統治理念そのものが儒教に重なる朝鮮時代の政治構造のなかで常にそこから抜け出すことを念願し、個人的人生哲学の深化を追究した李退渓と違い、武家社会の中で積極的に現実政治への参与を主張し、あくまで政治学としての儒教を推し進めていく、という日韓儒学(朱子学)のもう一つの側面を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで研究遂行に必要な重要な資料の調査・検討は概ね終わり、すでに一部の論文執筆に着手しているところであるが、研究全体の論理的な整合性をより確実にし、精緻にするための構想・研究に予想以上の時間が費やされた。一年間の事業期間延長が承認されたので、成果をまとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
これまで調査・考察してきた研究内容をまとめていく。元田永孚の儒教的皇道主義の時代的意義および熊本実学派の李退渓学との相異点、という二つのテーマを中心にして研究をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度中に研究調査や研究関連のシンポジウムを計画していたが実現できなかった。今年度の費用に充てたい。
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