この研究は、戦後日本の政治学者、丸山真男の思想を歴史的に考察すること、そのために1968-69年の東大紛争の実像を解明することをめざしている。東大紛争における丸山の思想については、未解明のことが多いから。 この年度は、1968-69年に限らず1960年代、さらには1945年からの丸山の思想を再検討することに力を注いだ。1946年3月に人民主権の思想に転じ、民主主義に賭けてから、日本社会の民主化を妨げる勢力に抗議してきたこと、1964年5月に戦後民主主義の「虚妄」に賭けると書いたと同時に、「永久革命」として民主主義を説いたことなどが、1968-69年に民主主義や戦後民主主義が問題とされる度に丸山が注目された背景だったから。「永久革命としての民主主義」「戦後民主主義と丸山眞男」の二論文を翌年度初めまでに発表した。 2017年秋の歴史民俗博物館の企画展示「1968年――無数の問いの噴出の時代」とその共同研究に参加し、1960年代の社会運動について得るところが多かったが、その研究報告集向けに「東大紛争大詰めの文学部処分問題と白紙還元説」を執筆した。
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