1968-69年の大学紛争は戦後日本の思想史の分岐点であり、そのなかでも東大紛争は重要だったが、学生は何に抗議したのか、安田講堂の鎮圧という収拾のしかたしかなかったのか、なぜあれだけ長引いたのかなど不明のことが多かった。そのなかでも注目されたのが戦後日本で民主主義を説いてきた丸山真男の言動であり、「ナチもしなかった」「概念の解体」「人生は形式です」などの言葉が不可解なまま残されていた。それらのことを解明したこの研究からは、知識人の知性について、学問と大学について、名ばかりの民主主義について、戦後日本の歴史について、多くのことを考えることができる。そこに学術的意義も社会的意義もあるのではないか。
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