いくつもの和太鼓を組み合わせて創作曲を演奏する「太鼓音楽」(組太鼓、創作太鼓)は、戦後日本に誕生した大衆音楽である。国内および海外に普及・発展し、国境を越えて頻繁に交流する「世界音楽」となった。研究代表者は太鼓音楽史を、(1)「黎明期ー誕生から海外進出までー」(1950s-1970s前半)、(2)「発展期ー世界音楽の時代へー」(1970s後半ー1990s前半)、(3)「安定と多様化の時代」(1990s後半―現在)に分類した。本研究の対象は、(2)「発展期」である。 3年間の研究期間を通じ、1960年代から1990年代までに誕生したアマチュア太鼓グループで、現在まで活発に活動しているものをいくつか選び、現地調査を行った。その結果、1980年代にはとりわけ多数の太鼓グループが全国に結成され、守るべき「地域の伝統」として民俗芸能化している点が明らかになった。それぞれの太鼓グループは、国内外の太鼓グループとヨコのつながりをもち、祭りやイベントに集結して、時には数百名の「揃い打ち」等を実現している。さらに最終年度には、「発展期」に特徴的な「太鼓職人の増加」について調査をおこない、太鼓による表現の追及に伴って打ち手自らが楽器を工夫し、太鼓職人を兼ねていく事例が多いことがわかった。 「発展期」は、太鼓グループの数が最も増え、表現の多様化がすすんだ時期である。本研究により、芸能が発生して普及・発展し、民俗芸能化していく過程でおこる事柄が明確になった。
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