本研究では、日本近代詩の翻訳不可能性について多角的な検討を加えることによって、以下の成果を得た。(1)多様な日本近代詩とその翻訳との対比的考察を通して、翻訳不可能性は、近代詩固有の形式(改行・連構成)及び詩的表現・詩的言語の性格がその直接的な要因となることを具体的に解明した。(2)昭和初期に行われた俳句翻訳をめぐる議論に検討を加え、そこで提示された多岐に及ぶ論点の中に、詩歌翻訳の可能性・不可能性に関わる基本的な原理が網羅されていることを確認した。(3)日本近代詩に特徴的なオノマトペ表現に焦点を据えた分析により、翻訳不可能性から可能性へと通路を開く翻訳実践の多様な試みを具体的に指摘した。
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