研究課題/領域番号 |
16K02479
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
竹内 康浩 北海道大学, 文学研究科, 教授 (40251376)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マーク・トウェイン / 人種 / 分割 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、米国の国民作家マーク・トウェインの創作原理を解明するため、作品の読解を継続するとともに、研究成果を刊行するための準備を進めることが出来た。 昨年度の草稿研究では、トウェインの創作原理において、本来分割不可能な一つの有機体を想像上「分割」ことが特徴的であることを明らかにしたが、今年度の研究においては、これまで社会的なテーマとしてとらえられてきたトウェイン作品における「混血」の主題が、実は「分割」への作家の関心と密接に結びついていることが明らかになった。すなわち、混血とは、異なる人種の血が混じり合った一人の人間、つまり、分割不可能なものであるのに対し、トウェインはそれを分割することを自らの作品において試みていたと思われるのである。たとえば、トウェインの代表作Pudd'nhead Wilson and Those Extraordinary Twins(邦題『うすのろウィルソンと驚くべき双子』)の冒頭部分で、登場人物が泣き止まない犬に対して「犬を半分に切って、うるさい方の半分を殺したい」と述べている一見ナンセンスな箇所は、その作品全体のテーマである黒人と白人の人種混交の問題に対して、トウェインが夢想していた一つの解決方法である、という読解の可能性があることが明らかになった。 今年度の「黒人と白人の血の分割」に関する発見は、トウェインの人種に対する態度を解明する際に大きな手がかりになる重要な研究成果であり、本研究の方向性の正しさを基礎づける発見であると考えてよい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トウェインの創作原理を探求する本研究は、29年度において研究が進展するなかで、トウェイン研究における最大のテーマと見なしてもよい人種問題に接続されることとなった。すなわち、本研究が明らかにした一つのものを分割するというトウェインの想像力の源泉は、実はトウェインの人種観を理解する上で、非常に重要な観点であることが明らかになった。 この研究成果は、これまでの広範なトウェイン研究と深い関わりをもち、それゆえ詳細かつ広範な叙述を必要とするものであるため、数千語程度の学術論文として発表するよりは10万語程度の研究書として刊行するのが適切であると考え、ブック・プロポーザルを作成し、サンプル・チャプターズとともに米国の学術出版社に送付した結果、幸いにも出版契約を結ぶに至った。この点で、非常に順調に研究は進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
28,29年度に引き続き、トウェインの草稿研究や作品の精密な読解を進め、トウェインの創作原理と従来のトウェイン研究との接続を探っていくとともに、出版契約を結んだ学術出版社に完成原稿を提出すべく、研究成果を発表するための執筆を進めていくことになる。当初、10万語の原稿になると考えられたが、現在の執筆状況を考慮すると、最終的には12万語程度、すなわち平均的な学術論文15本分程度の原稿になる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカでの文献調査をするための出張に十分な期間を確保できず、旅費が当初予定の半額程度にとどまってしまったため。 今後の使用計画としては、講義のない期間を利用して文献調査のための出張に係る費用に加え、研究成果を学術図書として出版するための準備すなわちインデックスの作成や校正に係る人件費などに使用する計画である。
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