研究課題
基盤研究(C)
ドイツ語圏の文学と映画を対象として、どのような時代にどのような文学作品がどのような意図でどのように映画化されてきたかを、社会学的観点から研究した。具体的には、エーリヒ・ケストナーの児童文学の映画化の二度のブーム(戦後と再統一後)、および、東ドイツにおけるトーマス・マンの『ヴァイマルのロッテ』(1975)の映画化などをとりあげ、社会の安定化、および、規範的な作品の再読による社会批判、という文学作品の映画化がもつふたつの機能を指摘した。
人文学
文学作品の映画化は、映画の初期から長年にわたって注目を集めてきたテーマであるが、従来の研究のほとんどが個々の映画化についてのケーススタディか、比較メディア論的な見地による考察であった。映画の題材の選択にあたっては、プロパガンダや教育的な目的が明瞭でない場合でも、その時代の政治的・社会的状況との関連が反映されていると考えられる。本研究は文学作品の映画化という現象がもつこうした政治・社会的側面に光を当てた。