岡倉覚三とタゴールというアジア主義を牽引した思想家が、共にインドでディキンソンの『中国人の手紙』に啓発され、東洋的価値観を形成していた可能性が明らかになった。日本のアジア主義的な言説や小説の英国起源と同時に、英国の代表的な黄禍論小説である『キモノ』(1921)が、皇太子時代の昭和天皇の訪英時期を狙って刊行された可能性が高いことが判明し、言説の相互関係と文脈を新たに解明することができた。あわせて、大川周明やR. B. ボースなどのアジア主義者を内偵していたH・P・シャストリの活動報告を英国公文書館で調査し、アジア主義者の知られざる一面を発掘することができた。
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