研究実績の概要 |
2018年度には、wh要素を束縛する標識の研究を行った。一つは中国語の文末助詞“ne”であり、もう一つはプロソディである。前者については、この文末助詞のふるまいが分割意味論を支持するものであることを示した。分割意味論では、一部の発話行為的な疑問文を除き、疑問文は共通基盤の分割で表されるが、文末助詞“ne”は、これらの疑問文の文末に現れることができる。一方で、“ne”には、対照話題(Contrastive Topic)をマークすることもある。両者をまとめると、出現場所は異なるものの、“ne”の出現は共通基盤の分割を前提とし、それ自身は分割された部分間の対照を強調する働きをすることを明らかにした。(以上、Ito, S. 2018 “How is contrast marked?” Paper presented at IACL-26 at University of Wisconsin-Madison、及び、Ito, S. in preparation “How are partitions marked?” In E. McCready, et al. (eds.) Semantics of Pragmatic Particles in East and Southeast Asian Languages. Routledge.) 一方、プロソディ、特にイントネーションは疑問文を表す重要なマーカーの一つである。本研究では、中国語では疑問素性を持つ接続詞で構成される選択疑問文と疑問素性を持たない接続詞で構成される選言疑問文を取り上げ、b母国語話者から音声のデータをとり、プロソディの比較を行った。結果として、選択疑問文と選言疑問文はプロソディ上のパターンは同じであることが分かった。
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