本研究では、疑問標識と発話行為力を有する形態素の相互作用を考察した。具体的には、Groenendijk and Stockhof 1989の提案による分割意味論の枠組みを踏まえ、中国語の疑問文文末に現れる助詞とプロソディを分析した。分割意味論の枠組みでは、疑問文の意味は、話し手と聞き手が共有する知識状態を表現する可能世界集合の分割である。本研究では、中国語の文末助詞“ne”と“ma”は、可能世界集合を分割しないため、典型的な疑問標識とは言えないこと、プロソディが疑問文形成に寄与する程度は、英語ほど高くないことを明らかにし、プロソディを疑問標識と見なすことに対して再考の余地があることを指摘した。
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