中央ヨーロッパにおけるドイツ語系中等学校のネットワークの制度と機能を解明することを最終年度の目的とし、各学校に所蔵されている「学校記録」Schulprogrammeの実態、その発行、流通の制度と機能を明らかにすることを目的に研究を進めた。新型コロナウイルス感染拡大前にドイツで収集することができた各学校の記録や、2次研究文献を中心に考察を進め、その結果を「「学校年報」から見るドイツ中等学校の世界 : 19・20 世紀ドイツ語圏におけるギムナジウムのネットワークに関する史料状況」(Sprache und Kultur 42)として公表した。代表的なギムナジウム(ベルリン、ウィーン、ミュンヘン、その他言語境界地域)の個別研究(生徒の社会史、地域における学校の社会的機能)、これらの研究成果をドイツ語・英語で公表すべく準備をしていたが、新型コロナ等の影響による研究の遅れが目立ち、今年度は実現しなかった。これらの研究についてはプロジェクト終了後も引き続き進め、可能な段階になれば公表をする予定である。 また、本研究によって明らかにされた学校システムや教育における質評価の制度が、現在のEUでの教育分野の「ボローニャ体制」を考える手がかりとなるため、本研究への参考資料としてドミニク・ゲッパート『ドイツ人が語るドイツ現代史』(原著名"Geschichte der Bundesrepublik Deutschland")(ミネルヴァ書房、2023年)を訳出した。
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