研究課題/領域番号 |
16K03062
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
林 尚之 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (20733273)
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研究分担者 |
田中 希生 奈良女子大学, 人文科学系, 助教 (20722903)
吉田 武弘 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 研究員 (30772149)
藤野 真挙 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (40747078) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 近代立憲主義 / 近世思想 / 帝国憲法 / 貴族院 / 政党政治 / 人権 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究業績は以下は以下の通りである。 本研究の目的は、近代日本立憲主義の意義を主権と人権の歴史的展開と関連づけながら明らかにすることにある。研究計画調書に明記したように、本研究の目的を1.「個人と立憲主義」2.「倫理/道徳と立憲主義」3.「戦争/植民地支配と立憲主義」といった各テーマの個別研究を研究分担者がそれぞれ史料調査収集を通じて行った。 1.に関しては、田中が近代立憲主義と近世思想のかかわりを中心に、本居宣長および平田篤胤の国学についての研究に専心した。とくに宣長については、三重県松坂市の本居宣長記念館にて、史料の調査をおこない、その成果を研究論文として発表した。さらに、憲法学者の樋口陽一(東京大学名誉教授)を奈良女子大学に招き、同大学の連携研究者の小路田泰直とともに「近代とは何か、立憲主義の可能性」と題するシンポジウムを主催者として開催し、司会およびコメンテーターとして、これまでに得た知見を一般に公開した。 2.3.に関しては、藤野が国会図書館憲政資料室で史料調査と、先行研究の整理を行った。林が近代立憲主義と倫理に関わって、思想司法と法の問題に取り組み、その成果を漢陽大学校の紀要に投稿、掲載という形で公表した。また、近代立憲主義と戦争については、内閣憲法調査会の研究、また戦後社会における自由と人権の特質を明らかにする目的から、社会問題の歴史に取り組み、その成果をブックレットの出版という形で公表した。 3.に関して、吉田が明治憲法下の議会制度を構成する貴衆両院の調和による強力な政治権力構築を目指した「両院縦断構想」に着目して検討を行った。同構想は、通常、衆議院の政党勢力(政友会)の勢力拡大として整理されるが、ここでは貴族院側からこれを推進しようとした同院の「非官僚派」とくに大木遠吉に注目することで、その視点から両院を基礎とした「政党政治」構想として読み直すことを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度ということで、研究計画を実施するにあたって、研究のベースとなる先行研究の整理と批判的検証、史料の調査収集といった基礎作業を集中的に行った。また、1.3.に関してはシンポジウムでの報告や学会誌での論文掲載という形で研究成果を公表した。特に、憲法学の泰斗樋口陽一と、連携研究者の小路田泰直が立憲主義をテーマにシンポジウムで報告を行った。憲法学者との学際的交流を深めたことが本研究の進捗に間接的にむすびついたと考える。海外の大学との研究提携に関しては、研究代表者である林が漢陽大学校の紀要に論文を投稿し、掲載に至った。海外の大学紀要における論文掲載という形で、本研究の成果を国際的に発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者の藤野が海外に籍を移すことになり、今年度から分担研究者を外れることになった。研究テーマは変更せずに、林と吉田、連携協力者に本研究計画への関与をより深めてもらい、藤野が担当していたパートをカバーするつもりである。今年度は、日本の近代立憲主義の規範的バックグランドになったドイツにおける立憲主義概念を調べるため、パウロ教会憲法やプロイセン・ワイマール憲法に関連してドイツ国立図書館(ライプツィヒ館、フランクフルト・アム・マイン館)でそれぞれ史料調査・収集を行う予定である。その憲法に関する国際的比較史研究の成果を学会誌への論文投稿やシンポジウムの開催を通じて公表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度ということもあり、各研究分担者が研究計画実施のための準備作業として、先行研究の整理と批判的検証に時間をかけたことから、史料調査のための旅費が残ることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進捗状況にあわせ、ドイツ並びに国内の史料調査収集のための旅費、または、研究成果を学会で発表するための旅費として使用する計画である。
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