研究課題/領域番号 |
16K03100
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
森部 豊 関西大学, 文学部, 教授 (00411489)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 契丹 / 羈縻州 / 唐朝の羈縻支配 / 府兵制 |
研究実績の概要 |
2017年度の当初の計画は、①遼寧省朝陽市博物館所蔵の墓誌の録文完成と、②既刊の石刻史料集を利用して,遼寧以外で発見された奚・契丹人墓誌の調査と整理に着手することであった。 このうち、①に関しては、同博物館の修理・再開館がずれ込んだため、調査することができず、手元にある同博物館提供の墓誌拓本を利用し、録文を再修正した。また、朝陽発見の墓誌群が有する情報を今一度整理し、羈縻州におかれた折衝府とそれにともなう軍事活動の情報をもとに、唐代前半期の蕃兵と軍制について考察した。この成果は、森部豊「唐代前半期における羈縻州・蕃兵・軍制に関する覚書―営州を事例として」(宮宅潔編『多民族社会の軍事統治―出土史料が語る中国古代』、京都大学出版会、2018)として公表した。 以上の朝陽市博物館が調査できないとの理由から、計画を一部変更し、唐朝が羈縻支配をおこなった北中国の北辺の景観調査を2017年8月におこなった。この結果、未発表の唐代墓誌情報を入手することができ、唐朝の羈縻支配崩壊後の北辺状況を明らかにしうる情報の一部を入手することができた。この成果は、2017年11月4日の唐代史研究会で「唐代幽州盧竜節度使,河東節度使,振武節度使の空間ー2017年河北・山西北部考察記ー」と題して発表した。 また、朝陽市博物館が発掘した新しい唐代の契丹に関係する墓誌についての情報が発信された(朝陽市博物館「遼寧朝陽市文明路四座唐墓」『北方文物』2017-3)。これにより、唐代前半期の羈縻州内の折衝府に関して事例が加わった。これについては、2018年1月に関西大学の東西学術研究所の研究例会で取り上げ、「近年の唐朝の羈縻支配に関する研究動向」という発表題目で、その内容を紹介・分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
朝陽市博物館の工事のため、当初、予定していた現地の墓誌原石の実地調査ができなかったことある。このため、本研究の基礎的作業である、朝陽市博物館所蔵唐代契丹墓誌群の詳細な録文作成が未完成になっているからである。 ただ、同博物館は再オープンしたとの情報を得ているので、2018年度の本調査と2019年度の補充調査を行うことによって、遅れをとりもどすことができると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、唐朝の羈縻支配の範囲を「外中国」へひろげ、モンゴリアにおける羈縻支配の状況を調査する。モンゴルでは、漢文墓誌が出土しているが、その出土地とその周辺の景観調査を重要である。唐朝の支配の拠点となるような城郭遺跡があるのか、あるいは無いのか。あるとすれば、突厥時代あるいはウイグル時代、契丹時代、モンゴル時代に造営された都市遺跡との関係などを調査する。 また、朝陽市博物館の墓誌の録文作成のみならず、その内容の精査もおこなっていく。これらの墓誌を、私は契丹ととらえているものの、中には漢人墓誌、高句麗人墓誌とおもわれるものも含まれる。これらの分析を、墓誌の内容に即し、残り二年間で行う予定である。
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