研究課題
平成28年度に引き続き、平成29年度には以下の調査を行った。1.禁教令撤廃後のかくれキリシタンの歴史的変遷と現状について、長崎市外海地区において現地調査を行った。大きな動きとしては、平成29年3月19日に「外海潜伏キリシタン文化資料館」が開館したことがあげられる。創設したのは外海地区の一部の住民が主体となった組織・外海文化愛好会である。同館では、外海地区の潜伏キリシタンが継承してきたマリア観音像やロザリオ、オラショ等の資料を展示している。同館の創設は、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録を意識したものである。2.文化遺産化が進む平戸市生月島において現地調査を行った。生月島のかくれキリシタン習俗に関する資料を多数展示している博物館「島の館」で毎年2回行われているオラショ公演を見学し、主催者や出演者に聞き取り調査をした。3.「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」/「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録に向けた長崎県内各種団体の取り組みと、それらがかくれキリシタンに与える影響について調査(文献資料調査および聞き取り調査)を行った。4.地域文化の文化遺産化や世界遺産化に関する日本および世界の動向を調べるため、また、1、2で行った現地調査を補完するための文献資料調査を行った。さらに、本研究の成果の一部を活用して「キリスト教の受容と展開-世界遺産への道のりをたどる」および「枯松神社-潜伏キリシタンから続くかくれキリシタンの聖地」(長崎大学多文化社会学部編、木村直樹責任編集『大学的長崎ガイド-こだわりの歩き方』昭和堂、2018年所収)等を執筆した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の実施直前に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産推薦取り下げ(2016年2月)という事態が生じたが、2017年2月には再び推薦書(新名称「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」)がUNESCOに提出された。このため、世界遺産登録後の影響に関する調査は次年度に持ち越されたが、「文化遺産化」という観点からは更なる展開を見ることができた。したがって、本研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
平成30年度の研究計画・方法は以下の通りである。1.引き続き長崎市外海地区と平戸市生月島において現地調査を行う。2.「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」世界遺産登録前後の長崎県内のさまざまな取り組みとその影響について、長崎県庁をはじめとする地方公共団体や観光関連団体の動向を調査・分析するとともに、長崎市外海地区と平戸市においても聞き取り調査を行う。3.1、2の調査を補完する文献資料調査を行う。4.関連学会において成果発表を行う。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は平成30年6月24日から7月4日にかけて行われる第42回世界遺産委員会(於:バーレーン)において世界遺産に登録される見通しとなっている。したがって、その前後に特に集中して調査を行う予定である。
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