1170年頃から1190年頃にかけて成立した一群のグラーティアーヌス教令集註釈書、所謂Summa Monacensisサークルは、アルプス以北における教会法学の発展を知る重要な史料である。本研究は、これらの註釈書を伝える諸写本の伝承関係と共に、諸々の註釈書相互の関係を明らかにすることに努めた。とりわけ大きな成果として、オクスフォード写本Barlow 37に伝わる註釈の由来と成立年代(1180年代半ば)を確定し、それを通じて、Summa Monacensisサークルに属する註釈が、1170年前後から1180年代半ばにかけて、「生きたテクスト」として発展し続けたことを示すことができた。
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