研究課題/領域番号 |
16K03273
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
福島 至 龍谷大学, 法学部, 教授 (30208938)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 團藤重光 / 團藤文庫 / 團藤日記 / 死刑廃止論 / 戦後法制改革 / 矯正資料館 / 北海道行刑 |
研究実績の概要 |
團藤文庫の利用可能性に関し、引き続き、日記や立法資料、裁判関係資料の3つの研究班を柱にして、連携研究者と分担しながら共同研究を本格的に遂行し、その成果を個人論文の形で、複数公刊することができた。また、團藤文庫中に所蔵する貴重な資料については、広く内外の研究者が研究資料として利用できるようにするため、デジタル化が必要であり、その構築に向けて関連機器を取り備えるとともに、龍谷大学付属図書館などとも協議を行い、デジタル化準備作業を開始した。 全体としての研究会会合を8回開催し、共同研究の実をあげることに努めた。特に、新たに研究協力者として、憲法学や法制史学の若手研究者3名の参加を得ることができ、共同研究の学際化を図って、一層の研究の拡大・充実につとめることが出来た。また、研究会会合に際しては、村井敏邦氏(一橋大学名誉教授・元日本刑法学会理事長)と井上正仁氏(東京大学名誉教授・元日本刑法学会理事長)から、それぞれ聞き取り調査を実施することができ、團藤氏の思想や行動などについて、より立体的な理解を得ることが出来た。 團藤氏の思想の中でも、とくに死刑廃止の主張は、いまなお多くの人々から注目を集めている。そこで、昨年度に引き続き、團藤氏の人権思想と死刑廃止論をテーマに、連携研究員の勤務校で実験授業を行い、本共同研究成果の教育への還元に取り組んだ。特に、帯広畜産大学と舞鶴高等専門学校の授業は市民への公開授業としても行われ、研究成果の社会発信も果たすことが出来た。 このほかにも、團藤氏が生前に訪問して思索を深めたほか北海道家庭学校などを訪問し、同所博物館などにおいて、関連資料の調査などを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体研究会会合は、所定の聞き取り調査を実施した上で、当初予定していた回数の倍以上に達し、共同研究の実をあげることができた。また、3名の若手研究者の協力も得ることができ、研究の深化・拡大をすることができた。研究成果については、実験(公開)授業を通じて、一定程度社会に発信することもできた。 各班の研究活動も、以下の通り順調に進捗している。①初期團藤日記検討班においては、前年度に完成した仮目録を踏まえ、日記の翻刻作業について検討を開始した。翻刻それ自体が研究活動であり、また翻刻によって広く内外の研究者に利用可能となることや、日記原本の保存の観点からもそれが望ましいことなどが、共通認識として確認された。②監獄法改正研究班においては、法史学分野から髙田久実氏(武蔵野学院大学)や小石川裕介氏(後藤・安田記念東京都市研究所)に研究協力者として参画を受けて、研究の幅を広げることができた。具体的には、戦前の満州や内蒙古、台湾、インドなども含めた立法の試みから、戦後の日本の立法について、團藤文庫中の貴重資料を用いて、連続的に検討を加えることができるようになった。③最高裁裁判過程研究班においては、評議のプロセスに関しては、憲法学からの研究が不可欠であることに鑑み、憲法学研究者である赤坂幸一氏(九州大学)に研究協力者として参画いただいた。同氏には、憲法学分野における関連研究の到達点などにつき報告を受け、その問題意識を共有することができた。これにより、研究の学際化が測れるようになった。 全体や各班の研究に共通する課題として貴重資料のデジタル化があるが、すでに仏教関係文書を中心にデジタル化の実績のある龍谷大学付属大宮図書館の技術的助言を得て、デジタルカメラやスタンド、専用コンピュータとソフトウェアなど設備一式を、本年度末までに取り揃えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度に当たるので、研究成果の取りまとめを行い、その成果物を次々年度研究論文集として公刊する方向で準備にあたる。その論文集には、全体共同研究の成果と各班の研究成果を登載する。共同研究の成果としては、團藤文庫の利用可能性の拡がりを提示し、広く内外の研究者に團藤文庫の価値を訴えることとする。同様に、当該論文集には、各班の研究成果も登載する。すなわち、團藤文庫中の日記、および戦前・戦中・戦後にかけての立法資料、最高裁裁判関係資料を用いて、それぞれの研究論文を登載する。今後の研究会会合は、各論文の作成に向けた意見交換、検討などを中心に、4回程度開催する。 研究成果の公表・発信のために、本年度中に龍谷大学において、團藤文庫に関する展示会を、一般公開で開催する。 貴重資料のデジタル化作業については、構築された装置を用いて、パイロット事業として実施する。具体的には、戦前の内蒙古関係立法資料などを対象として、カメラ撮影された画像資料を、龍谷大学矯正・保護総合センターのウェブサイトにアップして、一般の利用に供することを目指す。また、同時に、團藤文庫貴重資料の公開・利用規程案を策定する。 このほか、日記の翻刻作業については、今後の作業工程などを検討する。
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