研究課題/領域番号 |
16K03284
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
今本 啓介 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (10374761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 連邦倒産法第9章の手続 / 債務調整手続 / 自治体破綻法制 / チャプターナイン / 倒産条項 |
研究実績の概要 |
本年度は,引き続き,アメリカ合衆国における自治体の債務調整手続(連邦倒産法第9章の手続)の問題について検討を行い,勤務校の法学会の紀要である法政理論51巻2号に「アメリカ合衆国における自治体破綻法制の現状と課題(2)連邦倒産法第9章(チャプターナイン)の手続を中心に」として発表した。 本論文では,1934年に創設された1976年に改正される前の連邦倒産法第9章の手続について概観した。まず,昨年度発表した「アメリカ合衆国における自治体破綻法制の現状と課題(1)連邦倒産法第9章(チャプターナイン)の手続を中心に」(法政理論51巻1号177頁)において論じたアメリカにおいて連邦倒産法第9章の手続きが創設される前の状況を踏まえ,これが創設された背景として,少数債権者による妨害があったことなどを明らかにした。その上で,当初連邦最高裁判所は,債務者である自治体が債務調整手続の申立てを行う際,州行政機関の同意が必要とされていたことから,連邦憲法1章8条4項の倒産条項に反するものとして違憲としていたこと,その後の改正で,州行政機関の同意要件が廃止されるなどして,連邦最高裁判所が合憲であると判断するに至ったこと,その他に細かい改正はあったが,債務者である自治体が債務調整手続を開始するには過半数の債権者の同意が必要であったことなどを論じた。 本論文は,未だアメリカ合衆国における現在の連邦倒産法第9章の手続(自治体の債務調整手続)についての分析には入っていないが,これまで必ずしもわが国において紹介されていなかった連邦倒産法第9章の手続の創設の背景や創設当初の制度概要,創設当初の制度が抱えていた問題について明らかにした点で意義があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
他に依頼原稿が入ったことから,本研究を中断せざるを得ない状況があり,十分に進めることができなかったから。
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今後の研究の推進方策 |
本年度が本研究の4年目となるが,アメリカ合衆国の連邦倒産法第9章の手続については少なくとも現在の問題状況を明らかにさせるところまでは進めたいと考えている。そのために,勤務校の法学会の紀要である『法政理論』2号及び3=4号に執筆をして,一応の完成を見たいと考えている。 また,これとは別に,大学で刊行しているブックレットに執筆の機会を得たことから,本研究で得た成果についての一般向けに刊行物を出版したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
さらなる資料収集,および可能であれば現地調査も行いたいと考えているため。
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