2019年度は、国際共同研究加速基金による支援もあり、ミュンヘン大学の客員研究員として研究スペースを得て、Ansgar Ohly教授およびMatthias Leistner教授の2名と共に、ミュンヘンのみならずヨーロッパ各地で行われる様々な研究会合などにおいて共同研究を深めることができた。また、このミュンヘン滞在を活用して、研究代表者(上野)は、ドイツ国内の各地(ベルリン、ゲッティンゲン、フランクフルト)のほか、ヨーロッパ各地(ジュネーブ、パリ、オスロ、ワルシャワ、クラクフ、ルクセンブルク、ブリュッセル等)やアメリカ(ボストン、ナッシュビル)等に研究出張を行い、各地における著作権法の課題を調査すると共に、多数の研究者と交流を深めることができた。
その結果、本研究課題である著作物の類似性についても、様々な知見を得ることができ、特に多数の裁判例を分析すると、特にドイツにおいては、わが国における最近の傾向とは大きく異なり、類似性をかなり緩やかに肯定した裁判例が少なからず見受けられることが判明した。そこで、その背景にある考え方の相違や、そこから見えてくる日本の解釈論や裁判例の傾向の特殊性について、立ち入った精査を進めてきたところである。こうした研究成果は、現在、書籍として出版する予定あり、すでに特定の出版社から企画を承認されて、執筆を進めているところであり、1年以内には発行に漕ぎ着けられる状態である。
また、以上のような研究活動の過程において、2019年に欧州デジタル統一市場指令が成立し、さらに、欧州司法裁判所の判決が多数下されたことから、これをめぐって非常に盛んな議論がヨーロッパ中で展開されているのを目の当たりにした。そのような時期に現地に滞在できたことは、本研究にとってはもちろん、研究代表者(上野)の将来にとっても非常に有意義な成果となった。
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