最終年度は、これまでの研究のとりまとめを意識しつつ研究を遂行した。本研究は3つの柱からなるが、その第一の「基礎自治体の文書管理の実態」については、安曇野市文書館、松本市文書館、武蔵野ふるさと歴史館、双葉町役場、大熊町役場で調査(聴き取り調査含む)を行った。 第二の「政府内部(司法・立法・行政)の文書管理の実態」については、①司法府について熊本地方裁判所、東京地方裁判所、東京高等裁判所で情報公開請求を行い、これまでの調査を補完した。②立法府については、衆議院事務局での聴き取り調査、衆議院事務局と参議院事務局での情報公開請求を行い、資料収集を行った。 第三の「東日本大震災(原発事故)をめぐる政府外の関係機関の文書管理」については、福島での文書整理がほぼ終わったことから解題執筆に取り掛かる準備を行った。これに加えて、①今後、文書の寄贈先が問題となることから、九州大学文書館・広島大学文書館で聴き取りをしたほか、②資料整理・公開について佐賀県公文書館・熊本市立図書館で調査を行った。また、③補完調査として、長崎大学に情報公開請求を行った。④福島での「日本自治学会」に参加し、原発事故に関する学術的知見についてフォローアップした。 これまでの研究を踏まえて本年度は、①論文・書籍として「文書管理における廃棄の論点」(『ガバナンス』2020年2月号)を執筆したほか、昨年度の続編として福島大学ゼミ生とともに『飯舘村に生きて―20人の足跡ーⅡ』をまとめた。②報告としては、「熊本発・行政文書管理の未来型~自治体法務の高度化に向けて」研究会で「行政文書の廃棄をめぐる諸論点」、神戸大学での「第9回被災地図書館との震災資料の収集・公開に係る情報交換会」で「当事者として活動し、当事者として記録を残す―東日本大震災後に取り組んだ「学生避難バス」と「かーちゃんの力・プロジェクト」を振り返って」を行った。
|