2019年度は研究が前進したといえる。自民党政権の事前審査制を国際比較の中で位置づけることは、本研究課題の柱の一つであったが、その成果が「イギリスにおける政府・平議員間の政策調整―第二次大戦後から1970年代までを対象として―」(『比較政治研究』6巻、2020年)として結実したからである。同研究の主たる目的は、イギリスの二大政党における党内委員会(party committees)の歴史の検証を通じ、日本におけるイギリス政治理解への修正を試みたることにあったが、それを通じて日本の自民党政権における事前審査制が定着した要因について、新たな仮説を提示することができた。 2019年度は上記の研究と並行して、政務調査会内の特別調査委員会(調査会、特別委員会)に焦点を当てた研究を続けてきた。自民党政権の政策決定の大きな特徴は、与党平議員に対する政策過程への開放があるが、特別調査委員会はそのための重要な回路と考えられるとともに、この特別調査委員会の発達と事前審査制の定着に大きく貢献していると考えたからである。この研究の成果は、論文として2019年度中に投稿すべく努力を続けてきたが、2020年3月に入りコロナウイルス問題が深刻化し、国立国会図書館等の様々な機関が閉鎖され、年度内の脱稿が困難になった。しかし、8割方は論文を完成しているので、2020年度に脱稿できる見通しである。 上記以外の活動実績として、2019年度は関係者へのインタビューも精力的に行った。ただし公表を承諾いただける方は少なく、公開にはなかなか進まなかった。唯一承諾を得られたのが前衆議院事務総長向大野新司氏の記録であり、2019年9月談話速記録を科研費報告書として刊行した。
|