今年度は日本と東南アジアの関係について考察を行い、研究成果を出した。「東南アジア」という地理概念について、政治経済関係にくわえ、歌舞伎や現代美術などをとりあげ、ハイアートからポピュラーカルチャーをふくむ日本の文化外交を事例に分析した。また、文化外交と経済進出の関係についても注意を払い、その二つの相互関係について、戦後を中心に議論した。 また、「開発主義」という視点から日本とアジアの関係についても検証した。外交政策から派生する民間あるいは半政府組織の変遷に注目し、言説が政策となって経済を動かす過程について歴史的な考察を行った。これらはどちらも共同研究の場で練り上げられ、参加者の議論を経て刊行された。一つの成果は、教材として用いられるなど高等教育の教育現場で活かされている。 ほかに、大阪万博などのメガイベントを事例として日米関係についても考察を行った。1970年に開催された巨大国際イベントを歴史的文脈におく作業を行った。ここでは、戦間期のテクノクラシーと文化国際主義という世界的潮流、1960年代の近代化論を背景としたアメリカの日本への文化攻勢と「社会工学」というテクノクラシーの台頭という国際的な出来事に加え、大阪の経済国際主義というローカルな資源があったことを明らかにした。 上記の研究は、建築家や行政担当者などの実務者との議論を通じて行われ、成果の刊行後は2025年の関西大阪万博の関係者らと意見交換をする機会に恵まれた。
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