研究課題/領域番号 |
16K03570
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
佐々木 俊一郎 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50423158)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 嘘 / 贈与交換ゲーム / 経済実験 |
研究実績の概要 |
本年度は、情報の非対称性を伴う社会的ジレンマの状況において、経済主体の嘘が経済取引にどのような影響を与えるかについて実験を通して検証した。実験は、2016年10月に近畿大学の学部生237名を対象に実施した。実験において被験者は、「嘘実験」と「贈与交換ゲーム実験」を同一の組でプレーした。嘘実験では、被験者が相手に対して、どのような状況でどのような嘘をつくのかについて検証し、贈与交換ゲーム実験では、嘘をつかれた被験者(あるいは嘘をつかれなかった被験者)が相手に対してどのような利得配分を行うかについて検証した。 これら2つの実験における被験者の意思決定データをを分析し、以下の結果が得られた。(1)利己的な嘘は経済取引の効率性を損なうが、利他的な嘘は経済取引の効率性が高めることにはならない、(2)経済取引においては、どのような状況において正直に振る舞ったかという「文脈的正直さ」が重要である、(3)贈与交換ゲーム実験においてプレーヤー間の互酬性は確認される、(4)利己的な嘘をつくことができた経済主体はその後の贈与交換ゲームにおける互酬性の程度が高く、利他的な嘘をつくことができた経済主体はその後の贈与交換ゲームにおける互酬性の程度が低いことなどが確認された。これらの結果は、経済取引においては、経済主体が嘘をついたか否かだけでなく、彼らがどのような状況で嘘をついたのか(または正直に振る舞ったのか)という経緯や意図が重要であることを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに実験を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた実験結果の頑健性を検証するために、必要に応じて追加的な実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の支出は全て実験謝金であるが、実験謝金の額は、被験者の意思決定や抽選の結果によって変化するため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の最終年度までには、実験謝金の支出計画と実際の支出の差額を他の費目への支出等で調整する予定である。、
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