本研究は、大規模災害によるソーシャルキャピタルの形成や減退といった変動メカニズムを解明することを目的とした。本研究の特色は、被災地における二つの定式化された事実を説明する点であった。定式化された事実とは、「被災地ではソーシャルキャピタルが改善する可能性も悪化する可能性もあること」、そして「匿名の相手や有限期間の関係の相手とでも協調行動が起こること」である。これら各国の被災地で観測される現象のメカニズムを解明することで、今後起こりうる大規模災害に対しても有効となる、望ましい復興支援の在り方を追求した。この目的を果たすため、合計5本の論文の執筆を予定していた。 これに対し、本研究では補助事業期間中に12本の論文を執筆し、6本の論文を査読付き学術雑誌から、1本を学術図書の章として公表した。特に最終年度には、"Peer Effects in Employment Status: Evidence from Housing Lotteries"が 『Journal of Urban Economics』から、"Behavioral Impact of Disaster Education: Evidence from a Dance-Based Program in Indonesia"が『International Journal of Disaster Risk Reduction』から、"Guilt and Prosocial Behavior: Lab-in-the-Field Evidence from Bangladesh"が『Economic Development and Cultural Change』から、採択された。 そのほか、一般読者向けにも「自然災害が教える『コミュニティー』の大切さ」、「『頑張れば報われる』認識に男女差がある理由」の2本の記事を執筆し、どちらも東洋経済新報社の『週刊東洋経済』から出版された。
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