本研究では,OECDが公開している純社会支出のデータを用いて,社会保障システムの再分配効果について再検討を行った.社会保障システムの再分配効果に関する従来の推計では粗社会支出が用いられてきたが,本研究では政府による社会保障給付への所得課税,租税特別措置などを通じた租税支出,民間ベースでの私的社会給付の供給義務づけなどを考慮した,純社会支出に焦点を当てている.動学的パネル分析の結果,私的社会給付の割合が大きい国ほど社会保障システムの再分配効果が小さく,アメリカなどのいわゆる「隠れた福祉国家」では社会保障システムは統計的に有意な再分配効果がないことが明らかになった.
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