研究実績の概要 |
今年度は本研究の最終年度として、研究協力者とともに、今までの調査の結果報告会を行い、それぞれの成果の確認と国際学会(米国)での報告を行い、海外出版への準備を行った。明らかになった成果は以下のとおりである。(1)個別企業の経営理念の生成プロセスについては、企業の創設状況、時代、文化背景によって、固有の特徴が見られた。特に、アジア系企業の場合にはそれぞれの国の家族制度や相続形態などを反映して、経営理念の意味や機能が異なることが理解された。(2)企業のグローバル展開にともなう経営理念の海外伝播の方法に関しては、それぞれの企業にとって固有の特徴があるが、共通して見られたことは、理念の文言の言語翻訳のみならず「文化翻訳」を伴うこと、また、文言のみならず「行為」を通じての伝播が行われていることが理解された。(3)各企業の理念伝播方法は異なっているが、いずれも理念教育に加えて、現場での実践ならびに、企業を取り巻くステイクホルダーとの接触等を通じて行われていくことが明らかとなった。この点については、さらなる調査が必要であると思われる。(4)今回の調査では主としてアジア企業に焦点を絞ったため、アジア以外の企業との比較にまで研究が及ばなかった。従って、アジア企業の経営理念の特徴については、明確な特徴は見いだせるに至っていない。今後の課題としたい。 この成果の一部は下記の編著書として出版された。 Mitsui,Izumi ed., Cultural Translation of Management Philosophy in Asian Companies Springer Nature, 2020.
|