研究成果の概要 |
本研究の目的は,フランスの大手スーパーと納入業者との関係を中心に激烈な低価格商品競争を可能にする仕組みの一端を明らかにすることであった。大手メーカーは大手小売業との交渉で一定の力を持っているといえるが,小規模生産者にその力はない。スーパーへの納入価格の引き下げを常に求められ,生活基盤が安定しない状況にある農業者のなかには有機農産物への転換と独自の販路拡大に向かう動きが見られる。有機関連商品の一般のスーパーでの取り扱いも急増している。有機農産物の生産者をとりまく市場規模はまだ小さいとはいえ,直販や専門店などの販売チャネルの開拓が勢いづいており,その動きを支持する消費者層も拡大している。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
フランス小売業の売上高は大手小売業が過半以上を占めている。低価格商品の販売を消費者は好むが,小規模生産者にとって大手小売業との適正な納入価格交渉は容易ではない。消費者の健康志向や大手流通業に対する不信感などを背景に,質の良い商品に対する消費者の関心が高まっている。特に有機農産物の生産では従事者,耕作面積,販路が拡大している。彼らの販売チャネルは,スーパー,有機農産物専門店,直売,もしくはそれらの組み合わせにより成り立っている。生産・流通・消費のバランスのとれた関係の解決策の一つがこの方式であり,商品購買により彼らを支える消費者層の広がりは今後の求められるべき消費様式の一つであるといえよう。
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