研究課題/領域番号 |
16K03990
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大石 桂一 九州大学, 経済学研究院, 教授 (10284605)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 会計基準 / アウトソース / 会計規制 |
研究実績の概要 |
当年度は、本研究で掲げた3つの課題のうち、1970年代の米国で会計基準設定のアウトソースがなぜ起こり、それがいかなる帰結をもたらしたのかを明らかにするという課題に取り組んだ。その際、特に焦点を当てたのは、財務会計基準審議会(FASB)が会計基準設定をアウトソースされて間もなく起こった石油・ガス会計基準である。この研究成果の一部を学術論文(大石桂一「米国における石油・ガス会計の政治化問題」『企業会計』第69巻第3号、46-52頁)として公表した。研究の結果として明らかになった主要な点は以下の通りである。 会計の政治化の典型とされる石油・ガス会計基準の設定では、FASBの決定が最終的に証券取引委員会(SEC)によって明確に無効とされたが、これは米国の会計基準設定の歴史において唯一の事例であった。SECはその本務たる証券規制目的に加え、エネルギー政策目的、さらには独占禁止政策目的にも資する会計基準の設定が議会によって求められた。このように、1つの会計基準で複数の政策目的を同時に果たそうとしたことが、この問題の根源にあった。すなわち、石油・ガス会計基準の設定は、当時の国策ともいえるエネルギー安全保障に関わる問題であったことから、そこには多くの規制機関・行政機関や連邦議会の委員会が関与することとなり、これらの機関や委員会が様々な動機から自らの政策管轄の規制目的を優先させようとした。その結果、最終的にFASBの決定は「公益」を損なうとしてSECによって覆されたのだということが明らかになった。 このように、「会計基準設定のアウトソース」において複数の規制目的で会計基準が設定されるとき、通常は会計基準設定に関与しないプレイヤーが加わってくることから、その結果として会計基準設定過程が「政治化」する可能性が高いのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当年度は環境が変わったため研究計画の見直しが必要となった。その結果、当初掲げた3つの研究課題のうち、英国と日本に関する歴史研究は次年度へ見送った。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる次年度は、英国と日本に関する歴史研究に取り組む予定であり、可能ならば英国での史料収集にあたりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
環境の変化により計画していた史料収集ができなかったので、次年度以降に予定していた物件の購入を前倒しした。また、史料整理のアルバイトを雇う必要がなかったため、若干の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
若干の費目変更はありうるが、基本的には予定通り使用する。
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