研究課題/領域番号 |
16K04005
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松原 沙織 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (10514961)
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研究分担者 |
遠藤 貴宏 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (20649321)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 4大監査法人 / 女性会計士 / 会計基準 |
研究実績の概要 |
本研究は,資料と聞き取りを駆使した探索的な調査を行い,日本の4大監査法人において女性会計士の増加・定着を阻害する要因を,組織分析に関する制度派の視点を援用し,日英比較を通し明らかにすることを目的としている.日本における4大監査法人の会計専門職に聞き取り調査を行った結果,4大監査法人におけるキャリア形成について国際比較に基づき分析する方法が,日本の女性会計士の増加・定着要因を明らかにすることに結びつくと考えられた.同時に,すでに当該分野で研究の蓄積がある欧米に加え,日本と中国における4大監査法人の会計専門職を対象にインタビュー調査を行い,これらを検討に加えることでよりいっそう日本の特殊性が導かれると考えられた. 研究の出発点として,日本と中国の4大監査法人における会計専門職がグローバル化でどのように変容するか(しないか)という点に着目した.具体的には,日本と中国の4大監査法人のキャリア形成について,諸資源(経済資本(業務上のパフォーマンス)、社会資本(人脈),文化資本(学歴や文化的な素養))の作用の仕方が,どのような役割を果たしているのかに関して、探索的な調査を行った. 同時に,現在日本では,4つの会計基準(日本基準,修正国際基準,国際財務報告基準,米国基準)の選択適用が認められているが,日本の会計基準がグローバル化の中でどのように翻訳(translation)されているのかという点に着目し論文を執筆した.当該研究は,日本において4大監査法人における会計専門職がグローバル化でどのように変容するか(しないか)という点を深めるにあたり有益である.当該研究成果は,Discussion Paperにまとめられている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目は,日英の制度面(法,会計監査基準,社会規範)の比較に注力し,主に二次資料を収集・体系的に整理し,組織・個人のあり方へのインプリケーションに関し理解を深めることを目的とした. 実際には,日英の制度面の比較研究にとどまらず,中国も含め比較検討することができた.この背景には研究チームのネットワークを利用し,57名(日本28名,英国29名)の会計専門職に聞き取り調査を行っていた点があげられる.新たな調査に関しても,既に代表者のネットワークを介し,聞き取り調査への協力に快諾を得ていた.また,英国に関しては,共同研究者のネットワークにより,聞き取り調査の目星はついていた.さらに,中国に関しても共同研究者のネットワークにより,順調に聞き取り調査が行われ,万が一,既に想定している聞き取り候補者の都合がどうしてもつかない場合の対応も考えられていた.加えて,定期的に共同研究者と会合を持ち,進捗管理を徹底することにより順調に研究が進められた. 当初予定していた研究に加えて,4大監査法人のグローバル化と関連付け,日本の会計基準がグローバル化の中でどのように翻訳(translation)されているのか検討をおこなった.当該研究は,日本と中国の4大監査法人における会計専門職がグローバル化でどのように変容するか(しないか)という点,さらには日英の女性会計士の増加・定着要因を見ていく点において非常に有益であると考えられたため検討対象へ加えた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記に従い進めていく予定である.2年目は,第1に,今まで行った聞き取り調査をベースに,日本と中国の4大監査法人における会計専門職がグローバル化でどのように変容するか(しないか)という点に着目し引き続き論文を執筆する.具体的には、日本と中国の4大監査法人に注目し、キャリア形成における諸資源の作用の仕方を、国際比較することにより,日本の4大監査法人におけるキャリア形成の特徴を明らかにすることを目的とする.すなわち,キャリア形成において経済資本(業務上のパフォーマンス)、社会資本(人脈)、文化資本(学歴や文化的な素養)がどのような役割を果たしているのかという点に着目する. 第2に,1年目の制度面に関する検討を踏まえ,組織面に関する検討を行う.本研究でいう組織は4大監査法人のことであり,女性活用に関する動向に焦点を当て,聞き取り調査を中心に日英比較を行う.特に,Big4と呼ばれる4大監査法人に注目する. 3年目は,制度・組織に関する検討を踏まえ,個人に焦点を当てる.特に,Big4でパートナーとなった女性会計士と,それ以前に退職した女性会計士それぞれに対して,キャリア形成という観点から聞き取り調査を行う.そして,聞き取りで得られた一次データを分析し,制度・組織面での検討を考慮に入れ,個人レベルでの分析を進める 最終年度には,制度,組織,個人のそれぞれの次元でどのような相互作用が観察されるのかという点を統合して,なぜ4大監査法人において女性の進出が進まないのかという点に対する分析結果をまとめあげる.
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次年度使用額が生じた理由 |
英国でのインタビュー調査を予定していたが,研究の進み具合等から今年度の英国での調査を見送ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展を見据えながら,英国でのインタビュー調査を予定している.
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