研究課題/領域番号 |
16K04021
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
馬場 英朗 関西大学, 商学部, 教授 (20555247)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 公会計情報 / 公共サービス改革 / 官民連携 / インパクト評価 / 社会的価値 |
研究実績の概要 |
平成28年度は公会計情報活用の将来的な方向性を探るために、公共サービスの成果を可視化するインパクト評価に関する研究を進め、査読論文1本、研究所紀要論文1本、書籍の分担執筆1章にとりまとめた。その結果、インパクト評価の国際的な潮流と概念的なフレームワークを整理するとともに、ソーシャル・インパクト・ボンド等を活用した公共サービスにおいて、どのようにインパクト評価が用いられ、財政削減へと結びつけられているか、イギリスにおける現地調査なども実施して実践的なケース・スタディを積み重ねることができた。 また、研究成果を実際の活動現場に生かすために、内閣府の「社会的インパクト評価の実践による人材育成・組織運営力強化調査」等にも委員として参画し、全国の非営利組織や社会的企業がインパクト評価を導入する実践的な試みに知見を提供した。その結果、インパクト評価の理論と実践との間にはギャップが存在するものの、工夫次第で日本においてもインパクト評価を導入できる可能性が示されるとともに、インパクト評価におけるエビデンスの分析方法や金銭換算の考え方など、今後の研究に向けた新たなアイデアも得ることができた。 さらに、JAGA西日本部会及び関西大学産業セミナーにおいて研究成果を報告することにより、研究者だけでなく、行政の実務者や公会計に関わる会計専門家、さらには一般市民を対象とする啓発にも努めた。そして、欧米やアジアなどの研究者が参加する国際学会であるISTRにてソーシャル・インパクト・ボンドにおけるインパクト評価に関する報告を行うことにより、海外に向けて研究成果を紹介するとともに、意見交換を行って今後の研究に向けたネットワークづくりにも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、インパクト評価の理論的枠組みを整理するとともに、公共サービスの民間提供主体においてインパクト評価が果たす役割について考察し、平成28年度(初年度)の実施計画に定めた研究目標については概ね達成することができた。 特に、平成28年12月に休眠預金の活用法案が成立したことから、生み出した成果を適切に見せるインパクト評価の重要性が広く認識されるようになった。そして、内閣府によるインパクト評価の調査研究事業が始まったことによって、本研究の成果を実践現場で活用・検証することができた点は、今後の研究を進めるうえでも有意義であった。 その一方で、大阪府や吹田市などの地方自治体におけるインパクト評価の導入と、公会計情報の活用については、まだ各地の地方自治体においても公会計システムを導入し、その運用を試行錯誤している段階であるため、今年度は大枠の意見交換にとどまった部分もある。引き続き、実践的な研究に取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度から平成30年度にかけて、ロンドン大学SOAS校にて1年間の在外研究に取り組む予定であるため、イギリスにおける公共サービス改革の動向及び公会計情報の活用について、行政や社会的企業、中間支援組織などに対してヒアリング調査を実施して研究を発展させたいと考えている。 特に、これまでの研究では財政削減効果の算定などに、公会計情報がどのように活用されているかについては十分な調査ができていなかった。また、イギリスでは政府が公共政策を実施するとき、その介入によって生み出される改善効果について、財政的・経済的・社会的な価値を金銭的に試算する取り組みも行われており、日本の地方自治体においてもこれらの情報は非常に参考になると考えられる。さらに、機会が得られれば他の欧州諸国においても、どのような公共サービス改革及びインパクト評価の導入が行われているか調査するとともに、海外の研究者との研究連携にも努めたい。
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備考 |
論文等の研究成果を掲載している。
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