公共サービスの改善や官民連携を促進するための公会計情報の活用について、最終年度となる2019年度は以下の研究を進めた。 まず、公共サービス分野において実践が広がっているインパクト評価を民間公益活動に適用し、官民連携を促進する手段として導入が進められている休眠預金活用に関して、「休眠預金活用における社会的インパクト評価の論点整理―イギリスにおけるインパクト評価との相違点」を取りまとめ、日本NPO学会にて発表するとともに大学紀要に掲載した。 そして、イギリスにおいて官民連携を促進する公共調達手法として導入が進んでいるソーシャル・インパクト・ボンドの事例に関して、多様な主体が参画する複雑なスキームを入札仕様に反映させる手段について考察するために、「コレクティブ・インパクトを推進する公共調達手法としての競争的対話」を政府会計学会の学会誌に投稿し、掲載が内定している。 さらに、地方公会計の統一的な基準による公会計情報を用いて財務指標を算定し、公共経営に活用する方法を検討するために、「公共経営における財務指標活用の可能性―吹田市のケースからみた公会計情報の有用性検証」を吹田市会計室と連携して執筆し、大学紀要に掲載予定である。 これらの研究成果も含め、研究期間全体を通じて11本(うち査読付き2本)の研究論文を執筆・掲載し(書籍の分担執筆を含む)、公共サービスの改善や評価に公会計情報をどのように活用できるか考察するとともに、官民連携を促進する実践的な手法について検討した。 また、厚生労働省が2018~2019年度に実施した「保健福祉分野における民間活力を活用した社会的事業の評価・運営事業」の成果評価や、内閣府が2020年度に実施する「地方公共団体による成果連動型民間委託契約方式(PFS)に係る事業案件形成支援等業務」に有識者委員として参画し、研究から得られた知見を実践に生かしている。
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